研究者から一言 当初、ゆで卵の白身など熱変性タンパク質のゲルを乾燥して自由水のみならず結合水も徐々に除去すると、強度と透明性に優れたガラス様の物質に変換できるという技術に注目しました。この技術を従来の低密度コラーゲン線維のゲルに応用することで、生体内の結合組織に匹敵する高密度のコラーゲン線維で形成されるゲルに変換する第1世代基盤技術の開発に世界に先駆けて成功し、コラーゲンビトリゲルと命名しました。ここで、ガラス化(vitrification)工程を経て作製できる新しい安定状態のゲルに対して、新学術用語「ビトリゲル(vitrigel)」を提唱しました。その後、取扱い性に優れたコラーゲンビトリゲル膜の乾燥体や培養チャンバーを作製する第2世代基盤技術の開発に成功しました。 本プロジェクトでは、上述の基盤技術を利活用して、食品には適さないウシ、ブタおよびマグロの皮に豊富に存在しているコラーゲンよりコラーゲンビトリゲル新素材を創出することで、再生医療、創薬および動物実験代替法の分野での実用化を目指しています。具体的には、農業生物資源研究所(担当:新素材および眼刺激性試験法の開発)が中核機関となり、現在、佐賀大学(担当:人工皮膚の開発)、東京大学(担当:人工角膜の開発)および福島県立医科大学(担当:人工気管の開発)の3つの国公立大学の医学部と国立医薬品食品衛生研究所(担当:新素材および皮膚感作性試験法の開発)、さらに関東化学株式会社(担当:新素材および眼刺激性試験法の開発)、株式会社エコ&ヘルスラボ(担当:新素材の開発)、小野薬品工業株式会社(担当:人工皮膚の開発)および株式会社ダイセル(担当:皮膚感作性試験法の開発)の民間企業4社を含めた全9機関が連携する体制で展開しています。 |