■サイエンスアゴラ 2012 レポート
サイエンスアゴラ 2012ブース出展 サイエンスアゴラ賞を受賞しました
平成24年11月10・11日に東京・台場にある日本科学未来館とその周辺施設にて、サイエンスアゴラ2012が開催されました。生物研は「えっ?そんなに身近なの?遺伝子組換え技術を知ろう。」と題してブース初出展をし、「サイエンスアゴラ賞」をいただきました。 ご来場頂きました皆様、関係者の皆様ありがとうございました。
サイエンスアゴラは2006年から始まった科学イベントで、7回目となる今年は「見つけよう あなたと「科学」のおつきあい」というテーマで行われました。今年度のサイエンスアゴラは200を超える企画が出展しており、入場者は2日間でのべ6,000人を超えました。 生物研は来場者の方々と一緒に、遺伝子組換え技術とこれからどうやって“おつきあい”していけば良いのか、考えるきっかけを作りたいと思い、今回の出展を企画しました。ブースでは遺伝子組換え技術に関連するポスターや展示品を紹介するだけでなく、来場者の方にポスターを見ながら簡単なクイズに答えていただき、遺伝子組換え技術の現状などを知っていただくことを試みました。また、遺伝子の本体であるDNAに親しんでいただこうと、ブロッコリーからのDNA抽出実験も行いました。
ブースのタイトルにある「遺伝子組換え」という言葉自体に「何か難しいそうだね」と立ち去ってしまわれる方もいましたが、遺伝子組換え植物の実物として展示した青いカーネーションや青いバラに惹かれてくださる方も多く、2日間で350名以上の方々が生物研ブースに来てくださいました。 ポスターやクイズの回答を通して、年間の穀物輸入量の約半分が遺伝子組換え品種と試算されていることや、安全性評価のしくみがあることなどを初めて知りました、という声が多く聞かれました。遺伝子組換えカイコの話題に興味を持たれる方も多く、新しいカイコ産業に貢献する技術の1つが遺伝子組換え技術であることに驚かれれる方、「これからもがんばって研究してください」と応援してくださる方もいました。「本当に安全なの?」というお母さんや「野外で栽培すると生態系に悪影響がでそう」などの声も聞かれましたが、そういう意見も受け止めつつ、食品の安全性や農業とはそもそもどういうものなのか、というお話をすることもありました。学校教育やサイエンスコミュニケーションに関わっている方々からも、「授業に役立つ情報がたくさんありました」、「教員のリテラシー向上のためにも協力してほしい」、「遺伝子組換えについては多くの市民の方々からも質問を受けるので、正しい情報が欲しかった」などの意見をいただきました。こういったやり取りを通して、研究所の外にでて、遺伝子組換え技術について情報提供し、様々な方々と話し合える機会を継続して作っていくことの必要性を強く感じました。
今回、サイエンスアゴラにブース出展することも初めてでしたし、クイズを通した情報提供や来場者とのコミュニケーションの方法も、初めてづくしの2日間でした。これまでに出展してきた子供向けの科学イベントや研究成果発表の展示会とも違い、また、比較的少人数で行ってきた遺伝子組換え関係のイベントとも違い、幅広い層の多くの来場者の方々と遺伝子組換え技術についてのお話ができたという点でも、非常に有意義な2日間となりました。 また、生物研は日本コンピューター化学会様のブースに協力、緑色蛍光タンパク質を含む蛍光絹糸や繭を置いていただきました。緑色蛍光タンパク質の立体分子モデルとともに来場者の方に見ていただき、好評だったとのこと。また、岐阜県立農林高等学校の企画した遺伝子組換え農作物の是非に関する高校生ディベートなどにも協力、話し合いのまとめ役などをしました。さらに、向かいのブースで遺伝子組換え食品や放射線の食品照射などの話題を扱っていた市民団体「食のコミュニケーション円卓会議」のブースとも応じて連携しながら、遺伝子組換え技術に関するコミュニケーションを行うなど、他の団体様とも連携した活動ができました。 さらに、生物研は初出展にも関わらず、出展者による投票と審査委員会の選定による「サイエンスアゴラ賞」を受賞しました。評価の観点には科学的妥当性や価値観・視点の多様性、手法・表現の適切性なども含まれているとのことです。今回のサイエンスアゴラでの出展は、これまで生物研で行ってきた遺伝子組換え技術に関する情報提供やコミュニケーション活動の延長線であることから、サイエンスコミュニケーションの分野においても、私たちの活動が評価されたことは、今後の活動の励みとなりました。