レーザ切開によるカイコの体液採取法とシステム化
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[要約]
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5齢4〜5日のカイコ幼虫を0〜5℃の低温で麻酔処理した後、赤外線レーザ光で外皮のみを切開することにより、カイコ幼虫の体液採取が効率的に行える方法を、考案し、それを利用した自動体液採取装置を開発した。
農業生物資源研究所・昆虫新素材開発研究グループ・生体機能模倣研究チーム
[連 絡 先]029−838−6164
[分 類]技術開発、生物産業
[キーワード]カイコ、炭酸ガスレーザ、体液採取、外皮切開、システム化
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[背景・ねらい]
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近年、昆虫の体を工場と見なして有用物質の大量生産を行う昆虫工場の確立には、カイコ1〜2万頭規模での一貫した機械化による有用物質の大量生産システムの開発が求められている。しかし、その大量生産システム確立において最大のネックとなっているのが、有用物質を含む体液をカイコから採取する手法の機械化である。
そこで、ウイルス接種後に再び飼育されたカイコ幼虫からの体液採取を従来の手作業に代り、機械化により効率的に行える手法を確立する。
- [成果の内容・特徴]
- 体液採取する前に5齢4〜5日のカイコ幼虫を0〜5℃に20〜30分置くことにより麻酔処理し、炭酸ガスレーザ装置にセット後、出力数ワットの赤外線レーザ光をカイコの外皮に対して正中線方向へ真っ直ぐに照射することによって外皮のみが直線状に切開され、切開口から体液が噴出する(図1)。
- 外皮以外の組織や器官には損傷が少ないので、噴出した体液には消化液等の異物の混入が極力抑制される。
- 人力で連続供給したカイコを炭酸ガスレーザに搬送・切開し、体液を自動的に採取するカイコ体液採取装置を試作した(図2、図3)。
- 本装置は2人作業で2秒毎にカイコを連続供給することにより、体重の12%程度の体液を採取し、採取後のカイコの回収までを1頭当たり3分弱で行える(図4)。
- [成果の活用上の留意点・今後の展望]
- 本方法は、カイコ以外の幼虫や蛹の体液採取への適用が可能である。
- 本法を用いて、カイコを連続供給・切開し、体液採取を行う自動体液採取システムの開発の見通しが得られた。
[その他]
研究課題名 :自動体液採取およびウイルス接種システムの開発
予算区分 :交付金・動植物工場
中期計画課題コード:C2222
研究期間 :99〜01年度
研究担当者 :小林 亨、古田要二
発表論文等 :1)小林 亨 (2002)カイコ用体液採装置の開発. 第38回農機学会関東支
部講演要旨、P46〜47
2)小林 亨・古田要二 (2002)昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法.
特許第3336386号
3)Kobayashi T(2002)Development of a new method
for collecting
silkworm larvae hemolymph by laser beam incision.
Sericologia,
42(3), 365-371
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