ブラシノライド応答性遺伝子およびその利用


[要約]
  ブラシノライドはブラシノステロイドの活性型であり草型制御に関与している。ブラシノライドで応答するイネ特異的遺伝子としてOsBLE2遺伝子を単離した。OsBLE2はブラシノステロイド情報伝達系を介して発現量が調節され、その発現量を抑制した形質転換イネにおいては茎葉伸長の抑制が明らかになった。
農業生物資源研究所・分子遺伝研究グループ・遺伝子応答研究チーム

[連 絡 先]029−838−7446
[分    類]知的貢献
[キーワード]イネ、ブラシノライド応答性遺伝子、形質転換、草型制御


[背景・ねらい]
  ブラシノステロイドは植物細胞の分裂、伸長、分化等の促進作用があり、新たなタイプの植物ホルモンとして研究されている。ブラシノライドはブラシノステロイドの活性型であり草型制御に関与しているが、その作用の分子機構は不明な点が多い。そこで、DNAマイクロアレイ技術を利用してブラシノライド応答性遺伝子群を検出し、イネにおけるブラシノステロイド情報伝達の分子機構を明らかにした。さらに形質転換イネ作出により、本遺伝子の利用を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. ブラシノライド処理したイネ葉身基部から抽出したmRNAを用いて1265アレイで発現が亢進した12クローンに対して、ノーザンブロッテイングにてブラシノライドで発現が顕著に亢進する6クローンを検出した。植物ホルモン特異性・ブラシノライド濃度依存性・組織特異性をノーザンブロッテイングにて解析し、in situハイブリダイゼイションで根原基部や節網維管束等で特異的に発現が亢進しているクローンに絞った(図1)。
  2. その完全長cDNAを単離した結果、9カ所に膜貫通ドメインをもつイネに特異的な3243bpの遺伝子でありOsBLE2と名付けた。形質転換イネを作出した結果、OsBLE2の発現を抑制した形質転換イネにおいて、ベクターコントロールと比較して茎葉伸長が抑制されることを確認した(図2)。
  3. ブラシノステロイド受容体OsBRI1の発現を抑制した形質転換イネ及び三量体Gタンパク質のαサブユニットが欠失したd1突然変異体中ではOsBLE2の発現は抑制され、ブラシノライドを添加しても発現亢進は認められなかった。さらにMAPキナーゼの阻害剤であるアピジニンの添加により、OsBLE2の発現は抑制された(図3)。
  4. 以上のことより、ブラシノステロイド応答性遺伝子であるOsBLE2はブラシノステロイド情報伝達系を介して発現量が調節され、その発現量を抑制した形質転換イネにおいては茎葉伸長の抑制が明らかになった。

図1
 図2  図3
[成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望]
  1. 従来の植物ホルモン生合成に関与する遺伝子を利用する方法と異なり、外因性のブラシノライドによって誘導される遺伝子を用いて植物を矮化する方法を示す。
  2. OsBLE2はイネ特異的遺伝子であり、ブラシノステロイドに対して双子葉類と違う応答性を示すイネにおける情報伝達系の解明において、基礎的知見を与える。

[その他]

研究課題名    :植物ホルモン情報伝達の分子機構解明による植物機能改変
            ホルモン濃度に応答して発現の変化する遺伝子
予算区分      :生研機構基礎、マイクロアレイ
中期計画課題コード:A2514、A2413
研究期間      :00〜04年度、99〜02年度
研究担当者    :小松節子、ヤンガンシャオ(生研機構ポスドク)
発表論文等    :1)小松節子・ヤンガンシャオ(2002)ブラシノライド応答性遺伝子および
             その利用、特願2002-14583
            2)Yang G, Komatsu S(2000)Plant Cell Physiology 41:1243-1250

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