シルクフィブロインを用いた新規多孔質3次元構造体
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[要約]
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シルクフィブロイン100%からなる多孔質3次元構造体を作出した。シンプルなプロセスで、安全性の高く、優れた力学的強度をもつ構造体が形成され、生体親和性も良好であることから、再生医療素材等のシルクの未開拓用途への活用が期待できる。
農業生物資源研究所・昆虫新素材開発研究グループ・生体機能模倣研究チーム
[連 絡 先]029−838−6164
[分 類]技術開発・生物産業
[キーワード]シルク、フィブロイン、多孔質、スポンジ、細胞増殖
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[背景・ねらい]
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シルクは優れた衣料用繊維材料として利用されているが、近年、多様な産業分野での新規利用が検討されている。その利用形態としては繊維、フィルム、粉体、ゲルがあるが、多孔質3次元構造体(スポンジ)形態としての利用は未開拓のままである。その原因は、優れたシルク多孔質3次元構造体の形成技術が開発されていなかったことにある。そこで、新規なシルク多孔質3次元構造体の形成技術を検討し、新しいシルク利用用途の展開に資する。
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[成果の内容・特徴]
- シルクフィブロイン水溶液に少量の水溶性有機溶媒を添加し、凍結・融解処理することにより、多孔質3次元構造体が形成される(図1)。
- シルク多孔質3次元構造体の形成には、フィブロイン濃度、添加する溶媒濃度、凍結温度、凍結時間が影響する。
- フィブロイン濃度、溶媒種、溶媒濃度により、形成される多孔質3次元構造体の多孔質構造や力学的物性、また含水率を変化させることが可能である(図2)。
- オートクレーブ処理により、若干強度が低下するものの外観上の変化はなく、オートクレーブ滅菌が可能である。
- シルクフィブロイン多孔質構造体中では、繊維芽細胞の良好な増殖が観察され、シルクフィブロインの生体親和性が維持されている。

図1 |

図2 |
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[成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望等]
- 高含水率であり優れた力学的強度を有するため、化粧品分野でのパフやフェースパック材としての利用が期待される。
- 生分解性を有するシルクフィブロイン100%から構成されるため、種子保持材等として農業分野での活用が期待できる。
- 架橋剤等の化学物質を使用せず、オートクレーブ滅菌が可能であり、かつ優れた細胞増殖を支持するため、再生医療用の細胞足場材料としての活用が期待できる。
[その他]
研究課題名 :昆虫生産素材による骨・軟骨親和性材料の開発
予算区分 :生物ナノテク
中期計画課題コード:C431-4
研究期間 :02〜06年度
研究担当者 :玉田靖
発表論文等 :玉田靖:ハイドロゲルの製造方法及び細胞培養支持体、
特許 3412014号(2003)
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