青紫色素を生産する微生物の分離と色素の利用法


[要約]
青く汚染した絹糸から細菌Janthinobacterium lividumを分離した。この細菌は多量の青紫色素を生産し、生産された色素はメタノールなどの有機溶媒で容易に描出される。本色素は絹、羊毛などの天然繊維のほか化学繊維も・染色可能であり、色素の濃度と染色時間により、淡い藤色から紺色まで染色することができる。
蚕糸・昆虫農業技術研究所・生産技術部・桑病害研究室
[連絡先]0298-38-6081
[部会名]蚕糸・昆虫機能
[専門] 桑病害
[対象] 細菌
[分類] 普及

[背景・ねらい]
衣料用の染色剤としては、化学技術の進歩に伴って合成色素が主流をなしている。しかし、天然色素も、穏やかな風合いに染まることから依然として人気が高い。現在でも紫系の天然色素は少なく、アクキガイ(悪鬼貝)から採取される貝紫が有名であるが、極めて高価であり、大量生産は困難である。この様な背景のもとで、青紫系の天然色素が求められている。そこで、青紫色に変色した絹糸から色素を生産する微生物を分離し、その利用方法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 青紫色素を生産する細菌を汚染絹糸から分離し、Janthinobacterium lividum(ジャンシノバクテリウム・リビダム)と同定した(図1)
  2. 菌体から色素の描出を試みたところ、水では抽出されず、メタノールなど極性の高い有機溶媒で抽出された。
  3. 本色素は、絹、羊毛、綿などの天然繊維だけでなく、ナイロン、アセテートなどの化学繊維も染めることができる。天然繊維は青紫色に、ナイロンは濃紺に、アセテートは紫色に染色される(図2)
  4. 本色素の安全性を、毒性物質に感受性の高いヤママユガの卵巣に由来する細胞を用いて調べたところ、色素は培養細胞に全く影響を与えず、安全性は高いものと推察された。
  5. 本色素は、抗生物質の一種ビオラセイン(violacein)を含む2種類の物質であった。

[成果の活用面・留意点]
1 青紫色素は細菌の培養によって大量に得られるので、衣服類の染料として広く利用できる。また、ビオラセインには抗菌活性があり、安全性をさらに確認することにより、化粧品や食品等への利用も見込まれる。

[その他]
研究課題名:病原関連微生物における機能性成分の特性解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成8〜12年度)
発表論文等:1)細菌の生産する青紫色素とその染色剤及び着色添加剤としての利用法(特許出願中)
      2)微生物に由来する天然色素の抽出と染色への利用,蚕糸昆虫研ニュース33,p.2,1996
      3)読売新聞(夕刊)(1996年10月30日)ほか
      4)クオークなど雑誌2誌
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