来賓挨拶

岡谷市教育委員会 宮坂武男委員長

 皆さん、こんにちは。岡谷市教育委員会を代表致しまして、一言お祝いと歓迎の言葉を述べさせていただきたいと思います。
 シルク・ミュージアム・サミット2001の開催にあたりまして、全国各地より多くの方々にここ岡谷市の諏訪湖畔へお越しをいただき、かくも盛大に開会できますことをまずもって心よりお祝いを申し上げますとともに、ご歓迎を申し上げます。ようこそ緑と湖の町、岡谷へおいで下さいました。この岡谷の町は、皆様もご存知のように明治・大正・昭和にかけまして、恵まれた自然と豊富な水を利用し、山国の住民の勤勉性と先人達のたゆまない研究心と努力によって高い製糸技術をもって生糸の町として栄え、日本の製糸業界をリードして参りました。私達岡谷市民は、日本の近代化を支えた製糸の町を今でも誇りに思っております。しかしご案内にもありますように、近年の蚕糸業を取り巻く環境は大変厳しくなっておりまして、この岡谷市におきましても稼動している製糸工場はたった1社になってしまいました。寂しい限りでありますが、岡谷市の礎を築いた製糸への記憶とその活力は根強く残って私達を支えてくれていると信じております。
 こうした時期に、蚕糸・昆虫農業技術研究所の井上所長さんをはじめ職員の皆様方が、全国の蚕糸関係の博物館や資料館また研究者、同好の志に広く呼び掛けてシルク・ミュージアム・サミット2001が開催できますこと、しかもその第1回目がこの岡谷市で行われますことは、共催をさせていただきます岡谷市、岡谷市教育委員会と致しましてご関係の方へ感謝を申し上げますとともに、ご期待を申し上げる所であります。
 蚕糸業が次第に衰退していくなかで、新たなシルク製品の開発や製作が研究され、販売、染めや織りに関する関心や要望は依然と強く、各地で講習会や実践研究が盛んになっていることも事実であります。何千年来人類の育ててきたシルクの文化のもつ魅力は、こうした時代であるだけにかえって強くなっているとも考えられます。蚕糸・昆虫農業技術研究所の井上所長さんのお言葉にもありましたが、21世紀を迎えて豊かな生活の中で潤いを求める、そういった生活が求められている訳でありますが、蚕を飼ってみたい、糸を取りたい、機を織ってみたい、染色をしてみたい、といった素朴であるが人間本来の物を自分の手で作ってみたいという願いと絡んで、魅力は益々高まっているように思います。また学校週5日制の完全実施も近づいておりますが、体験学習としてシルクを扱ってみたい、そういう学校の要望も多いと聞いております。ところが、そうした願いを持った人達のための学習の場や、学習材が身近に得られるかといいますと、必ずしも整っているとは言えないのが現状であります。加えてその方法等も研究の余地があるとお聞きします。
 岡谷の蚕糸博物館では、以前から養蚕や糸取り、繭玉人形作りなど工夫をしながら、市民の要望に応えるように努力して参りましたが、これからは更に本腰を入れていかないと難しくなるのではと考えているようであります。新製品の開発、普及となりますと一段とご苦労も多いかと思う訳であります。本日のこのように遠隔の地からもたくさんの方々がおいでいただいたのも、きっと同じような悩みを持っておられ、このサミットの中で共に考え何かを得て帰りたいという切なる願いがあるようにもうかがい知ることができます。それと同時に、このように多くのお仲間がいて共に考えあうことは心強い限りであるとも思います。
 今日と明日、皆様方には多いに情報交換をされまして同じ文化の土壌を肥やし、成果を上げて頂きたくご期待を申し上げます。諏訪湖がこのように全面結氷したのも、近年稀な事であります。晴れておりますと、この諏訪湖の対岸に富士山も見える所であります。どうかこの湖岸の景観も楽しんで、温泉で疲れを癒していただきたいと思います。最後になりましたが、ご参会の皆様方の益々のご健康とご活躍にあわせて、シルク産業の活性化やシルク文化の振興を心よりお祈りいたしまして、お祝いと歓迎の言葉といたします。ありがとうございました。