生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

暖地での周年グラス体系向きソルガムおよびイタリアンライグラスの耐病性品種の育成

年度2019ステージ開発研究分野農業 (飼料作物)適応地域九州

キーワードソルガム・イタリアンライグラス、品種育成、耐病性、作付体系

課題番号 26086C
研究グループ 農研機構 九州沖縄研究センター, 福岡県農林業総合試験場, 長崎県農林技術開発センター, 熊本県農業研究センター畜産研究所, 大分県農林水産研究指導センター, 宮崎県畜産試験場, 鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場, 沖縄県畜産研究センター, 家畜改良センター宮崎牧場
研究総括者 農研機構 九州沖縄研究センター 高井 智之
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 暖地での周年グラス体系向きソルガムおよびイタリアンライグラスの耐病性品種の育成 (581.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

日本の食料供給基地である九州・沖縄地域の自給飼料生産は、冬作物と夏作物を組み合わせた作付体系が基本であり、これを向上させるには、両作物について優れた品種および栽培技術を開発することが重要である。冬作物のイタリアンライグラスでは、9月播種して年内に収穫できるいもち病抵抗性品種、夏作物のソルガムでは、紫斑点病抵抗性品種を育成し、両草種の育成品種を組み合わせた栽培マニュアルを作成し、その地域に合わせた作付体系を確立することで、年間乾物収量2.8t/10aを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 1+2番草で1,700kg/10aの乾物収量が得られる耐病性スーダン型ソルガム品種「ナツサカエ」を育成した。
  • いもち病抵抗性が強いために早播きが可能になることによって冬季の収量が400kg/10a、年間で1,100kg/10a が得られるイタリアンライグラス品種「Kyushu 1」および系統「九州2号」を育成した。
  • 実規模栽培において年間乾物収量で3t/10a以上を得ることができることを実証した。周年体系の栽培マニュアル (暫定版) を作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願33171号ソルガム品種ナツサカエを品種登録出願 (H30年6月) (出願者名 : 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄研究センター)
  • 品種登録出願32230号イタリアンライグラス品種Kyushu 1を品種登録出願 (H29年5月) (出願者名 : 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄研究センター)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • ソルガム「ナツサカエ」では、紫斑点病罹病リスクの高い地域での普及を進めるほか、4月上旬・中旬および7月播種等の新たな作付け体系、ダイレクトカット収穫体系および耕作放棄地等への普及を進める。
  • イタリアンライグラス「Kyushu 1」では、暖地・温暖地で9月中旬・下旬播種で新たな作付け体系として普及を進めるほか、既存品種の代替品種および耕作放棄地等への普及を進める。
  • オンライン版栽培の手引きを公開することで、両草種を組み合わせた周年グラス体系の普及を図る。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、イタリアンライグラス「Kyushu 1」の種子販売を開始し、オンライン版栽培の手引きを公開する。
  • 5年後 (2023年度) は、ソルガム品種「ナツサカエ」の種子販売を開始し、イタリアンライグラス「Kyushu 1」の年間種子販売量を年間10tに拡大する予定。
  • 最終的には、九州地方の主力品種としてイタリアンライグラス「Kyushu 1」を2,500ha、ソルガム品種「ナツサカエ」を600haの普及を図る予定。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 耐病性が向上した品種の普及による収量増および農地の効率的な活用等により、10億円の経済効果が期待できる。
  • 畜産が盛んな九州地域において、意欲的な自給飼料の生産が行われることは、国民の食へのニーズにかなった安心・安全な畜産物の安定的供給に対し大きな貢献になる。

暖地での周年グラス体系向きソルガムおよびイタリアンライグラスの耐病性品種の育成

問い合わせ先 : (国研) 農研機構 高井 智之 TEL 096-242-7755