品種詳細

璃の香(りのか)

  • レモンはカンキツの中でもかいよう病に弱く、国内の生産地を制限する要因の一つとなっています。そこで、農研機構は、かいよう病に強く、豊産性のレモン新品種「璃の香(りのか)」を育成しました。「璃の香」の果実は従来のレモン品種に比べ、200g程度と大きく、約1ヶ月早い11月下旬頃から成熟果実が収穫できます。また、果皮が薄く、まろやかな酸味が特徴です。
  • 果肉の割合や搾汁率が高く、加工適性に優れ、まろやかな酸味を生かした多様な加工製品の開発と、国産レモンの生産拡大が期待されます。「璃」は「宝」あるいは「ガラス」「水晶」という意味で、「璃の香」はこの品種のもつ透明感やすっきり感のある香りを表しています。
  • 主要特性

    • 育成地(果樹研究所カンキツ研究興津拠点:静岡市)および全国のカンキツ生産地での試作試験における通常の防除のもとでは、一般のレモンに比較して、かいよう病の発生程度は明らかに低く、強い抵抗性を示します(図1)。
    • 樹勢は強く、枝は直立性で、トゲの発生は少ない品種です。そうか病の発生もほとんど見られません。着花数は多く、隔年結果性が低く、豊産性で安定した生産が期待されます。成熟果実の収穫期は11月下旬であり、既存品種のリスボンレモンやマイヤーレモンより1ヶ月程度早く熟します(表1、表2)。
    • 果皮色は緑黄~橙黄で、果面は滑らかです(表3、図2)。剥皮のしやすさは、リスボンレモンより優れており、手で剥くことができます。果皮の厚さは3mmとリスボンレモンやマイヤーレモンより薄く、香りはやや少ない品種です。果実の大きさは200g程度と既存の品種より一回り大果です。また、果肉歩合は79%、搾汁率は50%とともに高く、既存の品種より歩留まりが高く、加工適性に優れると考えられます。果汁の糖度は9.2%で、酸含量は5.6%程度と、リスボンレモンと比べてまろやかな酸味が特徴です。種子はリスボンレモンやマイヤーレモンに比べ少なく、種なし果も結実します(図3)。
    育成地および全国カンキツ生産地24か所の試験研究機関で試験栽培した「璃の香」のかいよう病発生程度

    図1 育成地および全国カンキツ生産地24か所の試験研究機関で試験栽培した
    「璃の香」のかいよう病発生程度(2011~2012年)


    表1 「璃の香」の樹性、病害抵抗性、結実性および成熟期
    「璃の香」の樹性、病害抵抗性、結実性および成熟期
    (果樹研究所カンキツ研究興津拠点、2010~2012年)

    表2 「璃の香」の収量性
    「璃の香」の収量性
    (果樹研究所カンキツ研究興津拠点)
    璃の香:高接ぎ樹(2013年度で高接ぎ6年目および7年目)2樹の平均
    リスボンレモン:カラタチ台(2013年度で19年生)2樹の平均


    表3 「璃の果」の果実特性
    「璃の果」の果皮特性

    「璃の果」の果実特性
    (果樹研究所カンキツ研究興津拠点、2010~2012年)
    -:未調査
    「璃の香」は11月20日、マイヤーレモン、リスボンレモンは12月20日に調査分析した

    結実状況
    結実状況

    果実
    果実

出願番号
(出願日)
公表日 登録番号
(登録日)
育成者権の存続期間
28741
(2013年12月10日)
2014年5月15日 24081
(2015年3月20日)
30年
(満了日:2045年3月20日)
交配組み合わせ 旧系統名
リスボンレモン×日向夏 カンキツ興津66号

栽培適地

露地栽培においてかいよう病の発生が少なく、樹体の耐寒性についての問題は認められないため、広くカンキツ栽培地帯での栽培 が可能であ
る。

育成担当者

吉田俊雄、根角博久、吉岡照高、太田 智、喜多正幸、國賀 武、野々村睦子、中嶋直子、濱田宏子、瀧下文孝、村瀬昭治