ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

元気な農と食を支える、女性研究者たち

"農と脳"という異分野をつなぐ研究にやり甲斐を感じています

rolemodel11-1望月寛子さん

花き研究所
花き品質解析研究チーム
主任研究員

今の仕事(研究)について教えてください

姿形を見て美しいなと感じたり、香りを嗅いで安らいだり、花はとてもポジティブな存在として捉えられています。食べものではないのに、花の栽培は一つの産業となっています。人の生活において、なぜ花は必要とされるのか。私の専門である脳科学の手法を用いて花と人の関わりを検証し、花の新たな利用法についても探っています。

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キクの花の写真を見ている時の心拍数・血圧を測定しています

農研機構(研究という仕事)を選んだ理由は

大学に入った当時は漠然とマスコミ業界を志望していました。子どもの頃は身近に研究者はいなかったですし、自分がそういう職業に就くとは思ってなかったですね。それが、大学3年生で研究室を決める際、実験心理学に惹きつけられ、研究に熱中するようになりました。迷路を学習したマウスが注射一つで記憶に障害をきたす、といった現象に強い興味を覚えたのです。研究を続けたい一心で大学院に進学し、研究機関の職員を志望するようになりました。

花き研究所については、「花が人に及ぼす効果」を研究する人材を公募していることを知り、関心を抱きました。医学や心理学との境界領域の研究を幅広く進めている職場で、農学は全く未知の領域だった自分にとっても、ベストな環境でしたね。研究所に入った当時、花の名前はメジャーなものしか知らなかったのですが、4年間でだいぶ詳しくなりました(笑)。

学生時代と今の仕事(研究)とは、どのような繋がりがありますか

大学ではラットやマウスを使って記憶についての実験をし、アルツハイマー病やパーキンソン病で現れる記憶障害との関連について研究していました。今は花の研究所にいますが、人が対象であることは変わりないですし、学生時代に学んだ手法が基礎になっています。

仕事の面白さややりがいについて教えてください

花と人の関わりについて、科学的に検証している研究者は世界的にみてもめずらしく、日本においては私が第一人者ということになると思います。未知の分野を自分で開拓していくという面白さはありますね。

リハビリの一環として活用できるフラワーアレンジメントの研究と開発に携わったのですが、アレンジメントを作ることで認知機能が刺激され、作品を完成させることで達成感が得られるように、使う道具や手順に工夫を凝らしました。そういう「使ってもらう」ための仕事はやりがいがあります。

今後の仕事(研究)における夢は何ですか

私の周囲には遺伝子や色素について研究されている方もいて、そうした分野への興味も湧いてきました。花の鮮度評価について、花の側の生理指標と人の側の認知指標との関連を研究したら、花の生産や消費の上で役立つ結果が得られないかな、などと考えています。

仕事の上で女性だからと悩むことより、分野の違いで悩むことの方がずっと多いのですが、同時に異分野への興味も尽きませんね。脳科学は医学や物理学、工学、数学など様々な分野の研究者が参画しているのですが、そうした学際的な領域でずっと仕事を続けているからかもしれません。

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生けているのは「デルフィニウム」という名前の花。花弁が桜のようにパラパラと落ちてしまう特徴があるので、落弁防止のエチレン阻害剤を混ぜた水に生けて鑑賞期間を長くしています。より長く花を楽しんでもらうための研究素材です。

女子学生・ポストドクターへのメッセージをお願いします

今は家庭と仕事を両立するための様々な制度が整ってきていますし、職場の理解もあります。子どものために「帰ってもいいよ」と周囲の方は声を掛けてくれますが、その分、自分の研究は遅れるわけで、迷うこともあります。自分で選択できる分、自分がどうしたいのか、どうありたいのかをしっかり考えることが大切かもしれません。

仕事と家庭(生活)とのバランスについて、ご自身の考えや工夫されていること

求職時、既に結婚して小さな子どももいましたので、職場が自宅の近くにあることは私にとって大切な条件で、花き研究所はそうした条件にも適っていました。子どもが小さい間は、できるだけ一緒に居る時間を作りたいというのが私の考えでしたし、子どもの方もしっかり憶えていますよね、授業参観に行けなかったりすると(苦笑)。今は子どもも5年生になり、休日には友達と約束をしたりして出かけていくので、私自身が時間の使い方で戸惑っているところがあります。私はこれまで家に仕事を持ち帰ることはなかったのですが、休日に大学教員の主人と一緒に論文を読んでいると、何だか老夫婦になったような気分になるので、新しい趣味を始めようかと考えているところです。自分がこういった状況なので、お子さんが小さくて大変な思いをされている方には、10歳まで頑張れば楽になるからって声を掛けてあげたいですね。

子どもの預け先で困ったことはありません。この研究所に勤め始めた時、子どもは小学1年生だったのですが、いわゆる「小1の壁」は経験せずに済みました。知人に紹介されて子どもを預けた保育園がとても良いところで、続けて学童保育もお願いしています。児童クラブよりも遅い時間まで見てもらえるので 助かっています。結構おおらかな園で、子どももたくましく育ちました。

(取材日:平成22年5月)