ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

元気な農と食を支える、女性研究者たち

私自身が出産や授乳を経験し、乳牛の偉大さを実感できました。

rolemodel10-1野中最子さん

畜産草地研究所
畜産温暖化研究チーム
主任研究員

今の仕事(研究)について教えてください

将来、温暖化により気温が上昇したときに備え、乳牛の生産性への影響を正確に把握すること、また、暑熱下でも生産性がなるべく低下しないような飼 養管理技術の開発を目指しています。具体的には、乳牛を環境温度制御室の呼吸試験装置内で飼養し、エネルギーや窒素等物質の出納試験を行い、その生産性の 効率をみたり、牛の胃内における飼料の発酵を観察したりしています。

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環境温度調整室で飼養します

農研機構を選んだ理由は

「動物のそばで働くには?」という単純な動機から、働く場所の一つとして研究所という選択肢もあることに気づき、公務員採用試験を受け当時の畜産試験場に採用されました。

学生時代と今の仕事(研究)とは、どのような繋がりがありますか

学生の頃は、草の生産量を維持しながら乳生産を高める乳牛の放牧管理について、主に草地(放牧草)の視点から研究を行っていました。現在は家畜側 に視点が移り、家畜はどのように飼料を利用しているかを研究テーマにしています。とはいえ、対象としているのは乳牛というホールボディであり、学生時代に培った「牛を飼う、観察する」経験は活かしていますね。

仕事の面白さややりがいについて教えてください

乳牛は採食量や排泄量も膨大なため、飼養するだけで多大な労力がかかります。その上、1つの動物実験は数ヶ月にわたりますので、今の科学技術のスピードとは相反するものがあります。その分、何かがわかった時やまとめることができた時はとても嬉しいです。

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飼料になるロールをカットします

今後の仕事(研究)における夢は何ですか

私自身が出産や授乳を経験し、分娩と泌乳を1年で繰り返す乳牛の大変さや偉大さが心から実感できました。ですので、乳牛にとって快適な環境下での安全で安心な牛乳生産に寄与する研究ができたらいいなと考えています。

女子学生・ポストドクターへのメッセージをお願いします

「今でさえ朝も夜もないような生活をしているのに、家庭をもちながら研究生活を続けるなんて無理に決まっている!」と学生時代は、というか子どもを持つまでの私は思っていました。ですが、もともとこの研究所は働きながら家庭を持っている女性も多く、意志の弱い私でさえ今も働き続けています。これは、周囲の理解があること(動物を扱っている職場だからかもしれませんが、「育てる」ということに興味や理解のある方が多い気がします)、裁量労働制の導入などサポート体制が年々整ってきたおかげだと思っています。ですので、漠然とした不安があっても、まずはえいやっと飛び込んでみてはいかがでしょうか? 意外になんとかなるものです。もちろんなんとかならないこともありますが、そのときは「次は同じ失敗は繰り返さないぞ~」と、過ぎたことはあまり振り返ら ず、これからのことに目を向けるようにすればきっと大丈夫です。

仕事と家庭(生活)とのバランスについて、ご自身の考えや工夫されていること

まずはパートナー(夫)との協力体制、次に仕事を一緒にやっている仲間との連携でしょうか。首が回らなくなったとき、しょっちゅう助けてもらっています。また突然休んで動物試験が中止にならないよう、実験状況を日頃から伝えておく、手順は単純化し些細なこともわかるようにしておく、などを心がけていま す。

心に余裕があるときの育児はとても楽しいのですが、実際は「はやくはやく!」とせかしたり、大きな声で叱ったりの連続で、諸先輩方の「親として必要とさ れる時期はわずかなんだから楽しんでね」の言葉を反芻する毎日です。どうしてもたまってしまうストレスは、本や雑誌の乱読で解消しています。「一人時間」 もやっぱり必要ですよね。

(取材日:平成22年4月)