ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

元気な農と食を支える、女性研究者たち

子育てで気づいた「伝える」ことの大切さを、仕事でも感じています

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日下部裕子さん

食品総合研究所 食認知科学ユニット
ユニット長

今の仕事(研究)について教えてください

人が食べ物を見て、触れて、味わってという一連の作業を、感覚や心理といった多方面から捉えて解明する食認知科学という分野で、私は舌が味を感じ る仕組みを分子レベルで探っています。また、味を感じる仕組みを組み込んだ細胞を作り、それを利用して新たな食品開発につなげられないかを考えています。

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農研機構を選んだ理由は

大学時代は食品関係の研究室にいたのですが、直接指導してくれた教授をはじめ、周囲に女性研究者がたくさんいました。女性が科学者、研究者を志す ことになんの違和感も覚えない環境でした。ロールモデルに恵まれていたのですね。周囲のすすめもあって、後に農研機構となる現在の職場を選びました。基礎研究を究めていく大学と異なり、民間での活用、食品という出口に向かって研究ができるという点にも惹かれました。

学生時代と今の仕事(研究)とは、どのような繋がりがありますか

研究内容は学生時代と直結しています。大学は研究と同時に教育を担っていますし、休日のイベントも多いのに対し、農研機構は研究に専念するには恵まれた環境だと感じています。

仕事の面白さややりがいについて教えてください

何年かに一度「そうだったのか!」という発見があって、それはもう嬉しいものです。これは研究者なら誰でも経験する喜びだと思いますが。

また、食認知科学というのは現在世界中から多くの知見が日々積み重ねられている分野で、その進展を直接肌で感じられるというスリリングさがあります。その分、先を越された、という悔しさを味わうこともありますが、分からなかったことが分かっていく、というのは面白いですね。

共同研究を通じて、かけがえのない友人を得ることもあります。これは仕事自体の面白さとは関係ないかもしれないですが、研究分野が細分化され個人でできる範囲が限られている今だからこそ、誰かと相談しながら研究を進め、成果をともに分かち合う、そうしたパートナーシップを築く楽しさもあります。

今後の仕事(研究)における夢は何ですか

これは、自分が子育てをしていく中で意識するようになったことなのですが、研究を進めていくことと同時に、研究の成果を一般の人にも分かるように話す、利用してもらえるようにする、そうした「伝える」活動も大切にしていきたいと考えています。現在5歳と1歳の子を育てているのですが、特に上の子に対しては、日々の育児がすなわち「伝える」ことの連続ですから。

昨年、「若手農林水産研究者表彰」を受賞し、自分の研究成果についてお話しする機会が増えたのも、そう考える契機となりました。

女子学生・ポストドクターへのメッセージをお願いします

しんどいこともありますが、仕事はしやすい職場だと思います。育児など家庭の事情で休みをとることに周囲の理解もありますし、安心して勤め続けられるのではないでしょうか。結婚も出産も躊躇することはないと思います。

仕事と家庭(生活)とのバランスについて、ご自身の考えや工夫されていること

私の場合、第1子妊娠のタイミングがある意味最悪で、5年計画の研究課題が採択されたのとほぼ同時だったのですね。非常に戸惑ったのですが、当時の室長 に相談したら力強く「やるしかないだろう」と仰って。この言葉に勇気づけられ、腹が据わりました。妊娠は病気と違って急に倒れるという訳ではありませんか ら、目処をつけて準備をすることができます。周囲のスタッフにも支えられ、助けてもらいました。

第2子はこのプロジェクトの最終年度で、ある程度先が見えたところで妊娠しました。この時も迷ったのですが、ある女性に「仕事が崩壊しそうで...」と相談したら、「仕事は崩壊するわよ、でももっと大事なものがあるでしょ」と返されて。背中を押していただきました。

仕事も子育ても完璧とはいかず、どちらも中途半端同士ですが、あらゆる人を自分のメンター(助言者)にして、相談しながら、自分でできないところは補ってもらいながら、日々を何とか乗り切っています。

(取材日:平成21年12月)