ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

元気な農と食を支える、女性研究者たち

ヒマワリで地域に小さなエネルギーの循環を作り出したい

rolemodel02-1安本知子さん

中央農業総合研究センター バイオマス資源循環研究チーム
主任研究員

今の仕事(研究)について教えてください

水田から畑に転換した農地でヒマワリを栽培し、採れた油を食用油→廃食油→バイオディーゼルとして利用するための研究をしています。

現在は、転換畑でヒマワリを実際に栽培し、収穫した種子に含まれる油の成分を分析してどのような品質か調べたり、転換畑で効率的にヒマワリを栽培する方法を探ったりしています。

研究という仕事を選んだ理由は

本当は自分が農家になりたかったのですけど(笑)、公務員として農家と接点のある仕事をと考えたときに、自分は行政的なアプローチではなく作物をどう育てるかとかそういった側面からの仕事が向いていると研究職の道を選びました。

祖母が鳥取で農家を営んでいたのですが、ばぁちゃんのような農家がすたれないよう日本ならではの品種、農法を編み出せたらいいなぁというのも大きな動機です。

大学での研究と今の仕事(研究)の関連は

大学では作物学の研究室で発芽生理を研究していました。作物研究所で育種に携わるようになり高速液体クロマトグラフィーを用いた分析が必要となったのですが、大学では機器分析の経験が全くなく一から勉強しました。それこそ機械の取扱説明書を読むところから始めましたね。

仕事の面白さややりがいについて教えてください

論文を発表すると、海外からメールが届いたりして、研究を通じて世界とつながっているという面白さを感じます。

自分で手がけた品種を世の中に送り出せたことも、格別の喜びでした。それはゴマの新品種「ごまぞう」といって、健康機能性成分のリグナンを多く含んでいるゴマなのですが、実際に農家の方に作ってもらえる、色んな人に食べてもらえるというのは嬉しいものです。実は出産の前日も圃場で調査をしていました。産休中なので本当はダメなのですけど、どうしても気になって。出産の予定が9月でちょうどゴマの収穫期と重なってしまったのです。「ごまぞう」は私が命名したのですが、そんな訳で自分の子と双子のような存在ですね。

今後の仕事(研究)における夢は何ですか

水田転換畑でも育てやすいヒマワリの栽培法や、収量の多いヒマワリの新品種を作り出すことです。地域で栽培した作物から食用油を作り、廃食油から精製したバイオディーゼルで車を走らせられれば、地域の中で小さなエネルギーの循環を生み出すことができます。

油糧作物としてはヒマ(ヒマシ油の原料)やゴマなども有望なのですが、ヒマワリは花が美しく、観光資源にもなり得るといった付加価値がありますから、是非このプロジェクトを軌道に乗せたいです。

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転換畑のヒマワリ

女子学生・ポストドクターへのメッセージをお願いします

何が自分は一番好きなのかを考えることが大切かなって思います。好きこそものの上手なれといいますが、私は圃場に出て、作物を育てたり、土を触ったりするのが大好きで、これを仕事としてできるなんて本当に幸せだと感じています。ポストドクターの方には、せっかくポスドクまで頑張ったのだから好きなことを究めて、と伝えたいです。

仕事と家庭(生活)とのバランスについて、ご自身の考えや工夫されていること

私には中学1年生と小学4年生の子どもがいます。どちらの子の時も育児休業は取らずに産休明けすぐ職場復帰をしました。復帰に当たって預け先に困らないよう、出産の予定が分かってすぐに民間の無認可園を探して予約しました。職場では上司の室長が女性だったこともあって、状況を理解し何かとサポートしてくれました。

夫が研究職員で、結婚して以来、研究に専念する週と家事を担当する週とを交互に決めて助け合っています。昨年まで2年余り夫が東京勤務となり、その間はかなり大変で私の研究活動もある程度セーブしなくてはならなかったのですが、つくばに戻ってからはその埋め合わせをすると言ってくれているので、今は私が研究に没頭できています。研究という仕事はかなり特殊で知らない人には理解しがたい事情もあるので、夫が同業者で、同志のような関係を築けたのはと ても良かったと思います。

(取材日:平成21年11月)