ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

私とワーク・ライフ・バランス

「よく仕事をして、かつよく遊ぶ」、これを実践したい

rolemodel2-01松岡 誠さん
九州沖縄農業研究センター
企画管理部 研究調整役
プロフィール

今の仕事について教えてください

本年4月より九州沖縄農業研究センターの企画管理部 研究調整役(兼 広報普及室長)の仕事をしております。

研究調整役の仕事を説明するのは難しいのですが、大雑把に言えば企画管理部長が担っている研究所全体の研究統括業務の補佐ということです。

一方の広報普及室長ですが、これは九沖農研独自に設置した所長直属の「広報普及室」の長ということで、所の広報普及活動部門の責任者ということに なります。九沖農研の広報普及室では、研究成果等のプレス発表、研究所内外の様々な成果の普及イベントや一般公開、所長キャラバン*等の企画・実施、パン フレット、マニュアル、パネル等の企画・制作、視察や見学者対応、ホームページの作成・充実などを行っています。

*所長等幹部と広報、研究担当者が直接、研究成果の普及現場に出向き、生産者等関係者の方々と意見交換を行い、成果のフォローアップ、新たなニーズの把握を行う取り組み。

これまでのキャリアを振り返って、特に印象に残っている出来事があれば教えてください。

昭和59年1月から61年までの3年間、青年海外協力隊の隊員としてマレイシアにて活動しました。農業隊員であった私は半島マレイシアの僻地の村 で野菜栽培の普及活動に従事しました。派遣された小さな村は半島マレイシアの中で最も電化が遅れた地域にあり、ランプ暮らしでした。当時、私は大学を出た ばかりで、実際の農業現場での経験も知識も乏しく、普及の仕事では失敗の連続、あまり良い活動はできなかったと記憶しています。今思えばほろ苦い経験で す。ここで、自分の実力のなさを思い知らされ、帰国後、農学、農業の勉強に本格的に取り組みたいと考えました。

このマレイシアでの経験(現地の人々とのふれ合い、他の素晴らしい、様々な個性と経験を持つ隊員仲間との出会い)がなければ、農学研究の道を志すことはなかったと思います。

ご自身のワーク・ライフ・バランスについて、大切にしていることや苦労されていることを教えてください。

職場での仕事と、家での家族との生活、この二つはきっちりと仕分けたいと思っていますが、実際のところあまりうまくいっていません。ただ、「家に 仕事を持ち込まない、持ち帰らない」ことについては実践できています。また、休日には、できるだけ趣味のテニス、山登り、渓流釣りでリフレッシュするよう に心がけています。
子供達が小さい頃(小学生くらいまで)、石垣島に住んでいました。このころはよく子供達を連れて、泳ぎに行ったり、釣りに行ったりしていました。最近は 遊びに誘っても、どの子も相手をしてくれません。それぞれ大きくなるにつれ、自分の世界、つきあいができてくるわけですから、いたしかたのないことです。 また、そのうち一緒に山登りでもできるようになれば楽しいでしょうね。明日は一人で最近始めた鮎釣りに出かけます。

仕事以外の経験から、研究活動(仕事)に活かしたことはありますか。

大学時代に探検部というクラブに所属し、海外、しかもかなり僻地での野外調査活動を行っていました。その経験は、海外青年協力隊での活動、また、 奉職して後の海外での研究調査活動(遺伝資源探索など)に何らかの形で役立っていると思います。少なくともこれまで行ったどの国のどの地域においても日常 生活(衣食住)が耐えられないということはありませんでした。また人よりは、行った先の環境に素早くなじむことができると密かに自負しています。

仕事と生活を充実させるための工夫や、心がけていることがありましたら、教えてください。

当たり前のことですが、業務時間中はできるだけ仕事に集中する。オフの時間は原則的に仕事のことは考えず、家に仕事を持ち帰らない。余暇活動中に は、その遊びに集中する。よく仕事をして、かつよく遊ぶ、これを実践したいと思っています。そういった意味でこれまで年休もできるだけ消化するように心が けてきました。

あと、少しでも効率よく仕事をしたいと考え、朝は早起きをしています。早起きをして朝の時間帯はゆっくりと過ごし、かつ早めに出勤する(交通渋滞 が避けられる)ことは仕事にとっても自身の健康にとってもプラスになっていると思います。また、健康のためという意味もありますが、余裕があるときには片 道40分弱の道を歩いて通勤しています。道ばたの草花に季節の移ろいが感じられるし、通学中の子供や地域住民との挨拶も楽しいものです。

これに関連して、活用した(活用したい)農研機構の制度(休暇等)があれば教えてください。

これまで病休以外、特別な休暇制度は活用していません。今後、良い制度があって、状況が許せば是非とも活用したいと考えています。春か秋にまとめ て10日ほど休みを取ることができれば、四国88カ所巡りを徒歩でやりたいと思っています。一気に全部は難しいが、年間10日の休みがあれば一つの県くら いは回ることができます。4年かければ全部回ることができると思います。ちょっと抹香臭い話ではありますが、心身の鍛練と自身の成長のためにこれだけは やっておきたいと思っています。でも実現できるのは定年後ですかね?

後輩の研究職員や、次世代の研究者へメッセージをお願いします。

私自身が研究者としての王道を歩いてきたわけではありませんし、研究者として高い評価を得ているわけでもありません。したがって、農研機構の若い 研究者の皆様のお手本になれるような人間だとは思っておりません。ただ、これまでの22年間、こつこつと、原則的に、かつ真面目に仕事に取り組んできたと いう自負はあります。いつもではありませんが、できるだけ研究成果の受け手側のことも考えるようにしてきたつもりです。研究のための研究ではつまらない、 農学は実学であるとの思いからです。皆様には私などよりさらに一歩も二歩も前に進んでいただきたいと思っています。

こういう普通の研究者にとって、人間関係は重要かと思います。人は一人では生きられませんし、研究も一人では限界があります。同僚、関係者に対し ては常にできるだけ誠実に対応していくというのが一番かと思います。それが私のモットーです。ただ、研究者として図抜けて優秀と思われる方についていえ ば、話は別です。研究所や学会をリードしていくような優れた研究者の資質をお持ちの方は、人の思惑、人間関係などあまりかまう必要はないと思います。そん な細々したことは考えず研究に没頭すべきです。「角を矯めて牛を殺す」ことになっては、国家にとって、人類にとっての損失です。一般世間の人付き合いや人 柄の評価などは、偉大な研究業績の評価の前では小さくなってしまいます。

(取材日:平成23年7月)


プロフィール

1959年生まれ、宮崎県出身。
東京農業大学農学部卒業後、海外青年協力隊員としてマレイシアに赴き農業の普及活動に従事。東京農業大学大学院博士前期課程修了後、1989年農林水産省 に入省。熱帯農業研究センター、中国農業試験場、国際農林水産業研究センターを経て、2004年より九州沖縄農業研究センターに所属。
家庭では四姉妹の父。