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第223回つくば病理談話会演題

422) 離乳豚の回腸におけるセグメント細菌を伴う絨毛の萎縮[原因不明]

  • 提出者(所属): 金森 健太(静岡県中部家畜保健衛生所)
  • 動物種: 豚
  • 品種: LWD
  • 性別: 雄
  • 年齢: 38日齢
  • 死・殺の別: 鑑定殺
  • 解剖日: 2018年10月18日
  • 解剖場所: 静岡県西部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

母豚27頭、種雄豚5頭を飼養する繁殖農家において、2018年10月17日に離乳豚2頭が元気消失を示し、翌18日に2頭共死亡した。同群の豚に震えや衰弱が認められたことから、衰弱豚2頭(No.1, 2)を鑑定殺し、死亡豚2頭(No.3, 4)と共に病性鑑定を行った。提出症例は鑑定殺を行ったNo.2の個体である。

病原検査

細菌学的検査では、主要臓器、脳及び体表リンパ節から有意菌は検出されなかった。No.1と2の十二指腸、小腸下部内容物を用いた大腸菌の定量培養では、No.1の十二指腸から4.7×107個/g、No.2の十二指腸から1.6×105個/g、空腸から6.8×105個/gの大腸菌が分離されたが、いずれも溶血性は示さず、定着因子(F4、F5、F6、F18)及び毒素遺伝子(LT、ST、VT1、VT2)も検出されなかった。
ウイルス学的検査は、豚コレラ抗原検査(蛍光抗体法及び遺伝子検査(RT-PCR))で全て陰性だった。

解剖所見

全ての豚で外貌に著変は認められず、剖検所見はNo.2の肺にわずかに肝変化が認められただけであった。

組織所見(提出標本: 小脳)

回腸では、粘膜上皮細胞の脱落と共に絨毛の萎縮が認められ、パイエル板ではリンパ小節の増数が確認された。萎縮した絨毛の粘膜上皮細胞には、グラム陽性を示すセグメント細菌の付着が確認された。同様の所見はNo.1~No.3の検体で確認された。走査型電子顕微鏡検査では、分節の乏しいセグメント細菌の粘膜上皮細胞への付着が確認された。絨毛萎縮の原因究明のために、抗豚流行性下痢ウイルス家兎血清、抗伝染性胃腸炎ウイルス家兎血清、抗ロタウイルス家兎血清(全て動衛研)を用いた免疫組織化学染色を実施したが、陽性反応は認められなかった。その他の臓器において、著変は確認されなかった。

討議

セグメント細菌はヘルパーT細胞の分化を誘導し、腸管免疫を活性化させることが知られているが、本症例との関連性について。また、同様の事例の経験について。

診断

  • 組織診断: 離乳豚の回腸におけるセグメント細菌を伴う絨毛の萎縮
  • 疾病診断: 原因不明

423)豚の肉芽組織の形成を伴う壊死性化膿性肺炎[豚胸膜肺炎]

  • 提出者(所属): 山本 英子(神奈川県県央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 豚
  • 品種: 雑種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 92日齢
  • 死・殺の別: 鑑定殺
  • 解剖場所: 神奈川県県央家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

2019年2月14日総飼養頭数約860頭の一貫経営農場において、肥育豚舎の複数豚房で1~4頭死亡がみられると農場主から連絡を受け検診を実施した。肥育豚舎内の複数の豚房で、元気消失、起立不能、眼瞼浮腫、発咳を呈する個体が確認された。これらの症状は主に3~4か月齢の個体でみられた。元気消失し、前肢が立たず伏臥状態の生体1頭(No.1)と、元気消失、眼瞼浮腫、起立困難を呈した生体1頭(No.2)について病性鑑定を実施した。提出症例はNo.1。

病原検索

扁桃の凍結切片を用いた豚コレラ蛍光抗体検査は陰性であった。細菌学的検査では、肺病変部と肺門リンパ節からActinobacillus pleuropneumoniae 2型が分離された。脳、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、心嚢水、空腸上部内容物から有意な細菌は分離されなかった。ウイルス学的検査では、扁桃でペスチウイルス及びPCV2特異遺伝子、肺でPRRS特異遺伝子について遺伝子検査を実施したところ、肺からPRRS特異遺伝子が検出された。

剖検所見

肺は胸壁に癒着し、暗赤色斑様を呈していた。右肺後葉、左肺前葉後部及び左肺後葉に数か所硬結部が確認された。右肺後葉では気管支内に白色物がみられた。心臓は心嚢水が軽度貯留していた。

組織所見(提出標本: 左肺前葉)

肺では大型の凝固壊死巣がみられ、壊死巣周囲に多数の好中球が浸潤していた。浸潤した好中球の中には燕麦様細胞が確認された。壊死巣内には好中球浸潤、線維素の析出、菌塊がみられ、グラム染色を実施したところグラム陰性短桿菌であった。壊死病巣周囲は線維芽細胞が増生し、肉芽組織の形成がみられた。凝固壊死巣周辺では、化膿性病巣が多数みられ、細気管支腔内にも好中球が浸潤していた。

討議

今回の症例では肺胸膜において病変があまり認められず、壊死病巣周囲に肉芽組織の形成がみられました。感染から時間が経過していると考えてよろしいでしょうか。また、臨床症状と肺炎との関連、その他どのような要因が考えられるのかご教授いただきたいです。

診断

  • 組織診断: 豚の肉芽組織の形成を伴う壊死性化膿性肺炎
  • 疾病診断: 豚胸膜肺炎