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第207回つくば病理談話会演題

383) 牛のTrueperella pyogenesによる疣贅性心内膜炎、疣贅性心内膜炎による循環不全の影響を疑う肝臓の線維化[牛のトゥルエペレラ・ピオゲネス感染症]

  • 提出者(所属): 平野 晃司(埼玉県中央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: ホルスタイン
  • 性別: 雌
  • 年齢: 10カ月齢
  • 死・殺の別: 鑑定殺
  • 解剖日: 2015年7月22日
  • 解剖場所: 埼玉県中央家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

成牛38頭、育成牛8頭を飼養する酪農家において、2015年6月から、9カ月齢の育成牛1頭が右後肢疼痛による負重困難を呈した。その後、頚静脈怒張及び心雑音が認められ、7月19日に起立不能となったため、7月22日に病性鑑定を実施した。

病原検索

細菌学的検査では肺、心臓内疣状物及び心臓内疣状物拭いからTrueperella pyogenes、心臓内疣状物拭いからStreptococcus suis血清型33型参考株と近縁な既知の種には属さないレンサ球菌属菌が分離された。また、疼痛を呈していた右後肢皮下拭いから細菌は分離されなかった。

血液・生化学的検査

Ht 33%、RBC 971万/μL、WBC 22,700/μL、A/G 0.39、ALP 1,615 IU/L、LDH 2,000 IU/L超、γ-GTP 676 IU/L、T-Bil 3.0 mg/dL 、TG 25 mg/dL未満、BUN 43 mg/dL、Cre 2.3 mg/dL、Na 123 mEq/L、K 5.6 mEq/L、Cl 86 mEq/L。

剖検所見

剖検時、全身の皮下組織は黄緑色のゼリー状物が目立ち、重度の水腫を呈していた。水腫は空回腸の腸間膜、結腸間膜、盲腸~結腸の漿膜面でも顕著に認められた。心臓では、三尖弁及び肺動脈弁に小豆大~そら豆大の白色疣状物の付着が多数認められた。その他、胆汁の充満を伴った胆嚢の腫脹がみられ、右後肢には有意な所見は認められなかった。

組織所見(提出標本: 心臓、肝臓)

心臓では、菌塊、好酸性細胞退廃物及び線維素の析出を伴った重度の化膿性心内膜炎が認められた。炎症部周囲は線維芽細胞の浸潤が顕著で、石灰沈着、血管新生等も認められた。グラム染色では、これら菌塊はグラム陽性桿菌であり、抗Trueperella pyogenes兎血清(動衛研)に対し陽性反応を示した。その他、心筋線維間には、軽度から中等度にサルコシストの寄生がみられた。肝臓では、空胞変性及び小葉中心性の線維化が顕著に認められ、一部の領域では、線維性の架橋形成も確認された。線維化は一部、グリソン鞘の周囲でも認められ、胆汁栓も軽度に認められた。その他、胃~大腸にかけての粘膜下組織の肥厚等、中等度から重度の水腫性変化、空腸ではコクシジウムの軽度寄生が認められ、その他の組織に著変は認められなかった。

討議

剖検時に認められた皮下組織や消化管漿膜の著しい水腫、組織学的に認められた肝臓の線維化及び生化学的検査で認められた肝機能の悪化は、心疾患による循環不全と、それに伴った肝うっ血による影響と考えてよいか、ご意見お願いします。

診断

  • 組織診断:心臓 牛のTrueperella pyogenesによる疣贅性心内膜炎
        肝臓 疣贅性心内膜炎による循環不全の影響を疑う肝臓の線維化
  • 疾病診断:牛のトゥルエペレラ・ピオゲネス感染症

384) 種鶏のStaphylococcus aureusによる化膿性骨髄炎・関節包炎[鶏ブドウ球菌症]

  • 提出者(所属): 秋山 倫子(山梨県東部家畜保健衛生所)
  • 動物種: 鶏
  • 品種: 白色プリマスロック
  • 性別: 雌
  • 年齢: 約150日齢
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日時:2016年4月12日
  • 解剖場所:東部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

約800羽飼養の種鶏農場。2015年11月孵化の群(A)300羽のうち4羽が4月1日頃から脚弱を呈した。他のロット(B)でもみられたとのことで、4月12日にA群4羽(No.1~4)、B群1羽(No.5)の合計5羽について病性鑑定を実施した。B群は2015年4月孵化。毎ロット数羽程度脚弱を呈するとのことであった。提出個体はNo.3。

病原検索

No.1、3の肝臓、関節スワブよりStaphylococcus aureusが分離された。ウイルス学的検査では、5羽全てでトリレオウイルスPCR陰性。

解剖所見

A群4羽中3羽(No.1、3、4)で大腿骨頭の脆弱、関節液貯留、脛骨中足骨関節腫脹が認められた。A群1羽(No.2)で右坐骨神経が水腫様腫大し、脚部の皮下水腫が認められた。その他著変は認められなかった。

組織所見(提出標本: 脛骨遠位端)

脛骨では、偽好酸球の浸潤や線維素析出、骨梁の壊死等からなる化膿性骨髄炎が認められた。膿瘍も散見され、菌塊(グラム陽性球菌)の周囲には変性した炎症細胞が重度に浸潤していた。また、関節包でも偽好酸球の浸潤がみられた。その他、肝臓では、肝細胞の変性・壊死や、偽好酸球の集簇巣、囲管性細胞浸潤が認められた。

討議

鶏ブドウ球菌症の関節炎はブロイラーで多いと記載がありますが、今回130日齢を過ぎた種鶏で発病しました。日齢が進んだ種鶏や採卵鶏で同様の経験がありましたらご教授願います。

診断

  • 組織診断: 種鶏のStaphylococcus aureusによる化膿性骨髄炎・関節包炎
  • 疾病診断: 鶏ブドウ球菌症

385) Clostridium heamolyticum が分離され抗生剤及び補液治療を長期間実施した肥育牛におけるび漫性小葉中心性の肝細胞変性 [細菌性血色素尿症(BHU)疑い]

  • 提出者(所属): 矢口 裕司(茨城県県北家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: 黒毛和種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 10ヵ月齢
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日時:2016年4月4日
  • 解剖場所:県北家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

肉用繁殖牛120頭、肥育牛170頭飼養する農場で、2016年1月から2月にかけて肥育牛2頭が血尿・黄疸を呈して死亡した。2016年4月上旬に、肥育牛1頭が食欲不振を呈したため治療を開始した。しかし、3日後に黄疸を呈したため、予後不良と判断され当所に病性鑑定依頼があった。この農場では過去にも血尿・黄疸・溶血を呈して死亡した例があることから、細菌性血色素尿症を疑い、抗生剤(アンピシリン・セファゾリン)や補液(リンゲル・高張食塩水)による治療を実施していた。

病原検索

肝臓乳剤について、嫌気培養を実施した結果、Clostridium 属菌が分離された。分離菌は、C. heamolyticum の特異遺伝子(フラジェリン遺伝子)を増幅するPCRで陽性を示した。遺伝子解析では、得られた塩基配列は既報のC. heamolyticum のものと100%一致した。

剖検所見

全身皮下組織および可視粘膜は黄疸を呈していた。肝臓は黄色を呈し、やや脆弱化していた。胆嚢は腫大し、緑色の粘稠度の高い胆汁が貯留していた。

組織所見(提出標本: 肝臓)

肝臓では、び漫性小葉中心性に肝細胞の細胞質は好酸性を増し、核は濃縮して辺縁に位置するか消失していた。小葉中心部の肝細胞索は不整となり、うっ血ないし出血が認められ、一部では壊死や単核細胞の浸潤が認められた。肝臓の凍結切片のオイルレッドO染色で、小葉辺縁性の脂肪変性が認められた。グリソン鞘と肝門部リンパ節に淡緑灰色の顆粒(PAS 陽性、ベルリン青 陰性、オイルレッドO 陰性)を貪食したマクロファージが認められた。
肝臓について、抗Clostridium sp 兎血清(動衛研)を用いた免疫染色を実施したが、陽性反応は確認できなかった。

討議

肝臓の小葉中心性の病変は、治療による影響と考えられたが、C. heamolyticum の毒素による病変の可能性もあるのかご教授願います。

診断

  • 組織診断: Clostridium heamolyticum が分離され抗生剤及び補液治療を長期間実施した肥育牛におけるび漫性小葉中心性の肝細胞変性
  • 疾病診断: 細菌性血色素尿症(BHU)疑い