イベント・セミナー詳細

第281回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成28年9月16日(金曜日) 13時00分~
  • 場所: 農林水産技術会議事務局 筑波産学連携支援センター本館2階、農林ホール
       茨城県つくば市観音台2-1-9(交通案内)
  • プランナー:白田 一敏(株式会社ピーピーキューシー)
  • 司会者: 松浦 俊幸(群馬県家畜衛生研究所)

テーマ: 種鶏・孵化場の飼養形態、衛生ならび鶏病対策

1. 原種鶏農場、種鶏孵化場における飼養形態、衛生管理ならびに鶏病対策について

橘 亮介(株式会社ゲン・コーポレーション)

1.原種鶏農場:育種会社で育種改良された原種鶏のひなが導入される。海外からひなを輸入する場合、空港に到着後動物検疫所の臨船検査を受け、検疫場へ輸送される。検疫場では14日間の検疫期間を経て異常がなければ検疫解放となる。検疫解放されたひなは原種鶏農場に移され飼養される。原種鶏農場はA,B,C3つの衛生管理区域に分かれており、Aゾーンは駐車場や農場の敷地外で最も外側であり、Cゾーンは各鶏舎内で最も内側となる。それぞれA→Bゾーン、B→Cゾーンに入る場合はシャワーを浴びて専用の着衣に着替えなければならない。飼料に関して、工場から運ばれてきた飼料は農場入り口のストックタンクに一時保管され、各鶏舎へは農場内専用の飼料輸送車で運ばれる。そのため、飼料工場から来た飼料輸送車が直接農場内に入ることはない。野生動物対策としては鶏舎周囲にコンクリート舗装の防鼠帯や、電気牧柵を設置している。
2.種鶏孵化場:原種鶏農場からの種卵が搬入される。孵化した種鶏ひなは肛門鑑別により雌雄が鑑別され、ワクチン接種、各種加工、出荷検査を経て全国の種鶏場に出荷される。孵化日にはハッチャーやひな胎便の緑膿菌検査とサルモネラ検査を実施する。また、原種鶏の鶏齢に応じて定期的にひなの抗体検査、ひな卵黄嚢の大腸菌検査等も行う。

2. 採卵用ヒナの生産について 種鶏場・孵化場の業務

橋本 亘(日本レイヤー株式会社)

種鶏孵化の業界において、孵化場は採卵用のヒナを生産するレイヤー孵化場と肉用のヒナを生産するブロイラー孵化場に区分される。その中で、レイヤー孵化場の一般的な種鶏場の仕組み、孵化の仕組み、空調管理、衛生管理などについて概略を紹介する。種鶏場では、垂直感染する病気の予防を中心にして、疾病対策を行っている。また鶏脳脊髄炎(AE)など、種卵採取までに必ず抗体陽性を確認する必要がある病気について育成中の種鶏にワクチン接種を行う。
孵化場における業務は種卵の管理、孵化の温度管理、孵化した後の鑑別・ワクチン接種、孵卵機の洗浄消毒に大別できる。それらを総合的に管理し品質を確保しながら、商品化率を高めることが孵化場経営には重要である。そのためには、特に温度湿度などを細かくコントロールする必要がある。また衛生管理上、昨今の孵化場では、場内の各部屋に気圧の差をつけるなどして、空気の流れをコントロールして病原体の拡散を防ぐ仕組みになっている。採卵養鶏の大規模化にともない、ヒナへのワクチン接種は注射による接種法のほか、散霧による接種なども多く用いられる。準備されたヒナは空調管理された輸送車で育成場まで輸送され、餌付けされる。

3. 孵化場におけるISO22000の認証取得ならびに維持・運用

栗原 朋子(株式会社トマル)

国際規格ISO22000「食品安全マネジメントシステム」は、食品衛生管理システムである「HACCPシステム」とISO9001「品質マネジメントシステム」が統合された規格である(2005年9月誕生)。製造現場を含む組織全体のシステムを構築し、それらの徹底・遵守状況を定期的にチェック・レビューすることで食品安全を監視するものである。
当社は、採卵養鶏産業において、種鶏場、孵卵場、育雛場、育成場、成鶏農場、GPセンター、パッキングセンターの各事業所を持ち、種鶏の育成から食卵の出荷までの全工程を自社で行っている。この様な一貫生産体制の組織において、より安全な製品を生産・出荷することを目的として、2012年9月に食卵出荷拠点2事業所と初生雛出荷拠点である孵卵場の計3事業所にてISO22000認証を取得した(2010年10月キックオフ)。
今回の発表では、孵卵場での認証取得までの取り組み及び取得後のFSMS(食品安全マネジメントシステム)の具体的な運用の一部を紹介しながら、衛生管理面での効果や今後の課題なども検証する。

4. マレック病への対策(過去・現在・未来)

川上 和夫(共立製薬株式会社 先端技術開発センター)

マレック病とは、マレック病ウイルス感染を原因とする鳥類の感染症であり、家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されている。平成27年度におけるマレック病の届出報告は28戸2954羽、一方、食鳥処理場にてマレック病と診断され全廃棄となった数は、全国で49,411羽にのぼる。養鶏業界におけるマレック病は、レイヤー・ブロイラー・種鶏・コマーシャル鶏を問わず、様々な病態を引き起こし経済的に多大なる被害を与え、現在も終息することなく、対策を取り続ける必要があるウイルス性疾患である。
マレック病に対する治療法はなく、対策として初生雛または発育鶏卵にマレック病ワクチンを接種する予防策が中心となる。マレック病ワクチンの歴史は、1970年に七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)を使用した生ワクチンの国内実用化に始まり、オランダでRispensらが開発したCV1988株ワクチンが1985年に、また、アメリカのWitterらが開発した2価(HVT+SB-1)ワクチンが1988年に国内で開発・実用化され現在に至っている。
マレック病対策の新たな方向性としては、遺伝子組換え技術を用いてHVTウイルスをベクターとしてIBDやILT抗体を誘導する遺伝子を付与したワクチンが海外では開発・市販され始めている。

5. 採卵用ヒナにおける移行抗体保有状況

白田 一敏(株式会社ピーピーキューシー)

種鶏群における鶏病対策の一環として、様々な鶏病に対するワクチンが使用されている。その目的は、1)種鶏群自身の鶏病対策、2)生産された種卵から発生する初生ヒナへの移行抗体を付与することが主なものである。
初生ヒナへの移行抗体付与が目的で、種鶏群にワクチン投与を実施するものは、AE(鶏脳脊髄炎)、CAV(鶏伝染性貧血)、IBD(ガンボロ病)が代表例である。
また、鶏群自身の鶏病対策として、種鶏群に接種されたワクチンによる各鶏病(ND、IBなど)に対する抗体は、当然のことながら、移行抗体として初生ヒナの抗体保有状況に影響を与える。
したがって、野外では、コマーシャルの鶏群に対してワクチンプログラムを作成する際に、初生ヒナの移行抗体状況を考慮する必要がある。しかし、どれだけの関係者が、フィールドにおける初生ヒナの抗体保有状況を把握しているのかは不明である。
そこで、今回の発表では、当ラボの契約育雛場に導入予定の初生ヒナと同ロットの雄ヒナ(2015年、8孵化場・10鶏種・合計127ロット)について、ND・HI試験ならびにIBD・ELISA試験を用いて抗体検査を行った。そのうち、4孵化場・8鶏種の初生ヒナ(24ロット)について、ND・HI抗体の保有状況ならびにIBD・ELISA試験による成績を用いて、昨今のフィールドにおける傾向を紹介する。