イベント・セミナー

第266回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成24年9月21日(金曜日) 13時00分~16時00分
  • 場所: (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 講堂
       茨城県つくば市観音台3-1-5
  • プランナー: 中村菊保(農研機構 動物衛生研究所)
  • 司会者: 吉田晶徳(群馬県家畜衛生研究所)

テーマ: 最近の病性鑑定事例

1. ブロイラーの低血糖症

尾崎裕昭(鳥取県中小家畜試験場)

2009年4月から11月まで、一地域のブロイラーインテグレーターにおいて、突然の死亡増加や淘汰鶏の増加と低血糖症を伴う事例を6農場9鶏群で確認した。臨床症状は運動障害、敷料摂取、嗜眠、両脚を伸ばしたうつ伏せ状態が認められた。解剖では胃内に敷料を入れている以外に特徴的な所見は認められなかった。血糖値は発症鶏では94±104.1(平均±標準偏差)mg/dl、正常鶏では283±84.3mg/dlであった。これらの事例はHypoglycemia-Spiking Mortality Syndrome (HSMS)と類似した。

2. 採卵鶏農場で発生したロイコチトゾーン病の病性鑑定事例

東 智子(島根県家畜病性鑑定室)

2011年8月県内の一採卵鶏農場(18,000羽飼養)で死亡鶏が増加し、原因究明のため病性鑑定を実施した。臨床症状は元気消失、肉冠・肉垂の貧血、斃死。死亡羽数は133羽/日まで増加した。病理解剖(4例)により脾腫、腎、肺および膵臓に点状出血、血液検査でHt値低下、末梢血中にガメトゴニーの虫体を確認(14例/27例)した。病理組織学的検査では、多臓器に第2代シゾントがみられ一部で肉芽腫性炎症反応を伴っていた。以上より本症例をロイコチトゾーン病と診断した。ニワトリヌカカ対策として、防虫剤の散布、扇風機の増設および風向調節等を指導。死亡羽数は減少した。今後も飼養環境の改善による発症予防が重要と考えられた。

3. 採卵鶏農場で発生した豚丹毒菌感染症

別所理恵1)・澤田健二2)(岡山県井笠家畜保健衛生所、1)現: 岡山県岡山家畜保健衛生所、2)現: 岡山県美作県民局 )

2008年4月、約8,000羽を飼養する採卵鶏農場の1群で緑便が散見され、計10羽が死亡したとの通報があり、6羽の病性鑑定を実施した。病理検査で脾臓の濾胞壊死と化膿性肝炎が認められ、臓器から純培養的にErysipelothrix rhusiopathiaeが分離されたため豚丹毒菌感染症と診断した。発生鶏群及び非発生農場の血清を用い豚丹毒菌ラテックス凝集反応及び表層感染防御抗原Aに対するELISA検査(SpaA-ELISA)を実施したところ、ラテックス凝集反応では発生鶏群で強い凝集が認められた一方、非発生農場でも中程度の凝集が認められた。SpaA-ELISAでは発生鶏群のみ高いELISA値が認められ、本検査の有用性が示唆された。本農場はカラスが容易に侵入できるなど飼養環境に問題があり、飼養衛生管理失宜により豚丹毒菌が増殖・発症したと推察された。

4. 神経症状を主徴としたブロイラーの鶏パスツレラ症

阿部隆司、羽入さち子(新潟県下越家畜保健衛生所)

ブロイラー66,000羽規模の農場において、37日齢16,500羽を飼養する1鶏舎で、死亡・とう汰数が増加。斜頸等の神経症状や顔面腫脹がみられ、出荷までの死亡率8.4%、淘汰率5.5%であった。病理検査では、髄膜脳炎や肝臓の巣状壊死などがみられた。細菌検査では、ほぼ全例の脳からPasteurella multocida (Pm、莢膜抗原A型、菌体抗原Heddleston3型)が有意に分離された。一方、その他の臓器ではPm分離は少数例であった。また、顔面腫脹がみられた眼窩の菌検索でもPmの分離は1羽のみで、他は大腸菌など複数の菌が分離されていることから、二次的な発症が疑われた。感染経路は不明だが、Pmが脳で特異的に増殖した希な事例と考えられた。

5. ブロイラー種鶏ひなにみられた封入体肝炎

水城恵美1)、長谷川未央、椛本綾子1)(動物検疫所精密検査部病理・理化学検査課、1)現: 動物検疫所成田支所)、永野敬太郎(動物検疫所企画管理部調査課)

2010年10月イギリス産肉用原種鶏の初生ひな(雄4168羽、雌6876羽)の輸入検疫中に封入体肝炎の事例が認められた。検疫開始後6日齢までは雌雄群とも毎日の死亡が20羽前後で推移し、その後雌群では毎日の死亡が5羽以下に下がり、臨床的に特に異常は認められなかったものの、雄群では突然死を主徴とする死亡が10日齢から増加し、15日齢の114羽の死亡をピークに減少に転じ、18日齢以降は毎日の死亡が20羽以下となった。この間の死亡羽数・率は雄群で618羽14.7%、雌群では172羽2.5%であった。死亡したひなの剖検所見では肝臓の退色、黄色化および点状出血が認められ、組織学的には鶏封入体肝炎に特徴的な所見が認められた。また、ウイルス学的及び遺伝子学的検査で死亡ひなの肝臓から鶏アデノウイルスグループD,2型と相同性の高いウイルスが検出された。

6. 愛媛県で発生した伝染性喉頭気管炎

徳永康子、丹比就一、篠藤倫子1)(愛媛県家畜病性鑑定所、1)現: 中予家畜保健衛生所)

2010年11月、伝染性喉頭気管炎(ILT)の生ワクチンを65日齢で点眼接種した鶏群が、接種後3日目に死亡率の上昇や奇声を発する症状を示した。その後、同一鶏舎内の108日齢群に伝播した。両鶏群よりILTウイルス(ILTV)を分離し制限酵素断片長多型解析(RFLP)で分離株とワクチン株の性状比較をした。両分離株は同一型を示したが、ワクチン株とは異なる切断パターンを示した。病理組織学的検査では、気道粘膜上皮層において合胞体や核内封入体の形成が認められ、免疫組織化学的染色では、同病変部にILTV陽性反応が観察された。2011年2月には、他の農場でILTが発生し、11月発生農場の分離株とRFLP検査で性状を比較したところ同一型を示し、近縁ウイルスであることが示唆された。

7. 高死亡率を示したブロイラーのIB腎炎の発生

小笠原房恵(岩手県県北家畜保健衛生所)

2011年3月、一ブロイラー農場において、28日齢ひなが沈うつ、うずくまり、白色下痢を呈し、高い死亡率(3日間で44%)を示した。発症鶏群には、IBワクチンが接種されていなかった。病理検査による主たる病変は、腎臓の腫大、IBウイルス抗原を伴う腎尿細管上皮の変性・壊死であった。腎臓からIBウイルスが分離され、PCRにより同遺伝子が検出されたことから、IBと診断した。他に、腸管のコクシジウム感染、一部のひなにおける心外膜炎、脾臓の壊死および肺炎がみられ、大腸菌が分離された。高い死亡率を誘発した要因として、(1)IBワクチン未接種によるひなの免疫不足、(2)コクシジウムや大腸菌の混合感染が示唆された。

8. 地鶏に発生した鶏脳脊髄炎

秋山倫子(山梨県東部家畜保健衛生所)

2011年5月、地鶏飼養農場において、4週続けて8~10日齢のひなが脚弱症状を呈し死亡したため病性鑑定を実施した。病性鑑定の結果、AE特異遺伝子が検出され、脊髄腰膨大部の大型神経細胞に中心性色質融解がみられたことからAEと診断した。当該農場は種鶏場を兼ねる施設へ移行中で、4/19に種鶏にAE生ワクチンを使用していた。発病鶏から検出されたAEウイルスは、その遺伝子の塩基配列が種鶏に使用したAE生ワクチンと高い相同性を示したことから、ワクチン由来であることが示唆された。種鶏に使用したワクチンウイルスが人や車などを介して、移行抗体を持たないひなに水平伝播したものと考えられた。