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第267回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成24年12月21日(金曜日) 13時00分~
  • 場所: (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 講堂
       茨城県つくば市観音台3-1-5
  • プランナー: 島田英明(一般財団法人 化学及血清療法研究所)
  • 司会者: 依田真理(福島県県中家畜保健衛生所)

テーマ: 鶏の呼吸器病

1. 最近のIBV流行株の性状

真瀬 昌司(農研機構 動物衛生研究所)

鶏伝染性気管支炎(Infectious Bronchitis:IB)はIBウイルスによって起こる鶏の疾病であり、感染鶏は呼吸器症状、産卵低下、腎炎等の症状を示す。原因となるIBウイルスはコロナウイルスに属し、抗原性の異なる多様なウイルス株が世界各国で流行している。この抗原性の多様性は主にS1蛋白遺伝子の多様性に起因することから、IBウイルスではこの遺伝子領域の解析が主に行われており、遺伝子データベースに登録された遺伝子情報もこの領域に関するデータが最も多い。本講演ではこのS1遺伝子の解析結果を踏まえ、わが国の流行ウイルスの状況と海外の流行株との関連性について紹介したい。

2. 成鶏農場におけるIBV流行調査

金田 正彦(全農家畜衛生研究所)

伝染性気管支炎(IB)は経済的損失の大きい疾病の一つであるが、野外農場におけるIBウイルスの動向を調査した報告はない。そこで、臨床的に異常の認められない野外1農場において、定期的に採材を行い、抗体検査(IB-ELISA,MG-HI,MS-HI,ND-HI)と血液、糞便からのIB-PCRを実施した。PCRで陽性のものは、シーケンス解析により遺伝子型を決定した。その結果、調査農場の鶏群からJP-I,II,III,4-91に属するIBウイルスが検出され鶏群毎に偏りが認められた。これらのことから、臨床症状が認められなくても野外農場にはいくつかのIBウイルスが浸潤し、常在化していると推察された。

3. 鶏用生ワクチン投与後のリアクションの病理と考察

中村 菊保(農研機構 動物衛生研究所)

呼吸器病ウイルスが鶏に感染すると鼻腔内に常在する大腸菌などの細菌が増殖する。そのために、呼吸器病変が増悪したり、細菌が二次的増殖し、敗血症を引き起こすことがある。ワクチンは鶏の疾病予防対策として重要な手段である。通常は生ワクチンを接種しても臨床症状を示すことはないが、一定条件下ではリアクションを示すことがある。ここでは、主にニューカッスル病・伝染性気管支炎ウイルスの混合生ワクチン接種とそれに伴う大腸菌増殖についてその病理と考察について述べる。

4. MG・MSクリーニングで活用される抗菌剤の特徴とその有用性

能勢 泰宏(日本イーライリリー株式会社)

現在、国内でマイコプラズマ・ガリセプティカム(Mg)或いはマイコプラズマ・シノビエ(Ms)によって起こる鶏の呼吸器性マイコプラズマ病に対して効能効果を有する抗菌剤は、マクロライド系、テトラサイクリン系及びキノロン系である。これらの中で、キノロン系は承認事項として“第一選択薬が無効の場合にのみ使用が可能”であることから、Mg・Msクリーニングに汎用されている抗菌剤は前二者と考えられ、さらに、市場調査会社の報告から、マクロライド系抗菌剤であるタイロシン(両系統の鶏向け総販売金額のうち40%、2011年)が最も汎用されていると考えられる。本会では、弊社保有の科学データ及び国内外研究報告を基にタイロシンの特徴と養鶏業界における有用性を紹介する。

5. MG及びMS生ワクチンの性状と種鶏への応用

関屋 幸男(日本バイオロジカルズ株式会社)

MG及びMS感染症は共に経済的損失が大きく、養鶏業界にとっては重要な疾病である。ワクチン開発以前は、種鶏群をMG及びMSフリーとして垂直感染経路を断つ共に、コマーシャル鶏群では抗菌剤投与による予防及び治療が主たる防疫・防除対策であった。現在、日本ではMG不活化ワクチンが11製剤、MG(4製剤)及びMS(2製剤)生ワクチンが承認されており、MS以外は主として採卵鶏で応用されている。
弊社承認のMG及びMS生ワクチンは、温度感受性マーカーを有したts-11株及びMS-H株を種株としたものであり、病原性復帰及び垂直感染がないこと、若齢鶏に対しても病原性を有しないこと、また、抗体を惹起する免疫原性及び攻撃に対して防御効果を有する有効性が確認されている。MS生ワクチン承認以降、種鶏への応用率は漸次上昇し、現在、肉用種鶏で両ワクチンは50%以上、採卵種鶏でMGは38%、MSも28%応用されている。Gazzarらの論文に対する弊社の見解を述べると共に議論をしたいと考えている。

6. 採卵鶏及びブロイラー由来大腸菌の病原性及び薬剤感受性

村瀬 敏之(鳥取大学)

鶏の大腸菌症は大腸菌の感染によって起こる疾患で、様々な病型が認められている。侵入門戸の一つとして呼吸器が重要と考えられている。ブロイラーにおいては急性敗血症や肝被膜炎等が多発し、経済的損失が大きい。また、近年では、採卵鶏における敗血症、腹膜炎及び卵管炎の発生が報告されている。演者らは発症鶏の病変由来株と遺伝的に区別できない性状を示す菌株を、鶏の糞便や鶏舎内環境から分離している。また、これらのうち多剤耐性を示す株が少なくない。加えて、鶏の大腸菌症の原因菌(APEC)とヒトの腸管外大腸菌感染症由来株は、共通する病原性関連遺伝子を保有していることから、APECの公衆衛生学的意義が議論されている。