イベント・セミナー

第270回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成25年9月27日(金曜日) 13時00分~
  • 場所: 農林水産技術会議事務局 筑波事務所本館2階、農林ホール
       茨城県つくば市観音台2-1-9(交通案内)
  • プランナー:谷村 信彦(農研機構 動物衛生研究所)
  • 司会者: 英 俊征(神奈川県県央家畜保健衛生所)

テーマ: 最近の鶏病発生事例

1. キジ農場におけるボツリヌス症発生事例

大井 真矢、森野なつ樹 (長野県佐久家畜保健衛生所 上田支所)

平 成24年8月放鳥用キジ飼養農場(種キジ約120羽、育成キジ約1500羽)から死亡キジ増加のため病性鑑定依頼があり立入検査を実施。翼・脚麻痺、頸部 弛緩(リンバーネック様症状)を主徴とし、終息までに9区画中4区画の育成キジ435羽が死亡、区画毎の死亡率は約52~94%。ウイルス学検査で鳥イン フルエンザ、ニューカッスル病は否定。解剖・病理組織、一般細菌検査に有意な所見無し。遺伝子検査で飲用水及び死体埋却土壌からボツリヌスC型毒素遺伝子 を確認。マウス接種試験により同C型毒素を確認。死亡キジからの毒素証明には至らなかったが、環境材料からの毒素検出、特徴的臨床症状及び発生状況から本 症例をC型毒素産生菌によるボツリヌス症と診断。

2. 幼雛の鶏にみられたClostridium perfringens感染症

横澤奈央子 (群馬県家畜衛生研究所)

2012 年4月、約26,800羽を飼養する肉用鶏農場において、3日齢13,400羽の鶏群で突然死する雛が増加したため病性鑑定を実施した。剖検では、死亡雛 の肝臓は腫脹し、帽針頭大~米粒大面の暗赤色斑が散見され、組織検査では、肝臓にグラム陽性の大桿菌を伴った多発性の巣状壊死がみられた。細菌学的検査で は、肝臓からClostridium perfringens (Cp) が分離され、PCRによりα毒素およびNetB毒素特異遺伝子の保有を確認した。さらに、NetB毒素の活性も認められた。Cpは通常、3~6週齢のブロ イラーに壊死性腸炎を引き起こすが、今回の症例では病変は肝臓に限局していた。Cpの感染経路は不明であったが、導入後に寒冷感作や換気不足などのストレ スにより発症したと推察され、飼養環境の衛生対策の強化を指導したところ、その後の発生は認められていない。

3. 大規模採卵鶏農場で発生した鶏マイコプラズマ病

種子田 功、加藤あかね (京都府中丹家畜保健衛生所)

2012年1月、14万羽飼養の大規模採卵鶏農場で、1鶏舎で死亡羽数増加(10~40羽/日)と、鼻汁漏出、眼周囲の腫れが散見されるとの連絡があり、病性鑑定を実施。細菌検査では、気管スワブ及び眼窩スワブ等から鶏マイコプラズマ(Mycoplasma gallisepticum;MG、Mycoplasma synoviae;MS) を分離、またはPCR法により特異的遺伝子を検出(5/5)。その他、臓器等から大腸菌等も分離(6/7)。病理検査では、二次気管支周囲のリンパ濾胞過 形成を伴う炎症性細胞の浸潤を認め(6/7)、病変部のMG、MSの免疫染色で陽性を示した(2/2)。以上の結果から、本症例は鶏マイコプラズマ感染に よる免疫機能低下等により、大腸菌症等を併発して死亡羽数が増加したものと考えられた。

4. 腎炎型伝染性気管支炎の発生事例と分離ウイルスの性状

徳永 康子 (愛媛県家畜病性鑑定所)

2011 年3月、約11万羽飼養の採卵鶏農場で、約150日齢の採卵鶏(1群約23千羽)に下痢を主徴とし、解剖所見では腎の腫脹と退色を認めた腎炎型伝染性気管 支炎(IB)が発生した。分離株は、6種類のIBVに対する抗血清を用いた片交差中和試験により2株(練馬とAK01)と交差、S1蛋白遺伝子の分子系統 樹解析でJPIII遺伝子型に分類された。分離株を33日齢のSPF鶏に接種した病原性確認試験では下痢や腎炎が再現され、IBに親和性を持つ部位(腎臓等) にウイルス増殖を認めた。発症鶏群の血液性状は、尿酸値(7.95±0.46mg/dl)、リン濃度(11.92±0.67mg/dl)で高値を示し、約 1ヶ月後にはいずれも有意に低下し腎機能の改善が認められた。

5. 食鳥検査において認められた鶏白血病ウイルスJ亜群(ALV-J)の関与が疑われる組織球症

布留川せい子 (福島県食肉衛生検査所)

福 島県食肉衛生検査所の検査で、2009年と2010年にブロイラ-と肉用鶏に急性マレック病と類似した病例が発生した。肝と脾が腫大し、び慢性の粟粒大白 斑を伴っていた。病理組織学的に、肝臓のグリソン氏鞘周囲、脾臓の中心動脈周囲に紡錘~多形性で細胞質が豊富な細胞の増殖巣が認められた。これらの細胞 は、免疫組織学的検査で抗Iba1抗体に陽性で組織球系細胞であり、また、鶏白血病ウイルス(ALV)抗血清を用いた免疫染色で抗原陽性を示した。PCR 法による検査でALV-J亜群のウイルス遺伝子が両症例の各1臓器から検出され、遺伝子解析でそれらは米国系のALV-J ADOL株と近縁であった。

6.平飼い採卵鶏群におけるヒストモナス症の発生とその対応

矢島 佳世 (栃木県県央家畜保健衛生所)

管 内平飼い養鶏農家において、ヒストモナス症が発生し、発症鶏群の早期とう汰、鶏舎清掃及び消毒等の対策を指導したところ、新規導入群での発生は認めなかっ た。本発生を受け、管内平飼い養鶏農家を対象に寄生虫浸潤状況調査を実施したところ、22戸のうち12戸から各種寄生虫卵を検出した。調査時に寄生虫病の 発症鶏は認められなかったが、ストレス等の影響による発症が懸念されたため、本病の一般的知識、予防や対策の方法及び調査結果を示したリーフレットを作成 し、管内平飼い養鶏農家に配布した。今後も、寄生虫病の危険性と衛生管理の重要性を再認識してもらうため、各種寄生虫病に関する一般的知識や予防と対策方 法を普及啓発していく。

7.比内地鶏農家におけるニワトリオオハジラミの発生とその対応

山口 恭代 (秋田県南部家畜保健衛生所)

ニ ワトリオオハジラミは、ハジラミ目、短角ハジラミ科の昆虫で、体長雌雄約3mm、世界各地に分布し、ニワトリ、七面鳥などに多くの鳥類に寄生し、羽毛、 毛、皮膚を食し、全生涯を体表で過ごす外部寄生虫である。ハジラミが寄生すると、ニワトリは始終落ち着かず、嘴で体のあちこちを掻き、採卵鶏では産卵数の 減少を起こすことが知られている。
今回、比内地鶏飼養農場で、ニワトリオオハジラミの大量寄生を認められる事例が発生した。駆虫薬の噴霧で効果が 得られなかったため、薬浴による徹底的な駆虫を選択。冬季で降雪のなかでの実施であったが、1羽も損耗することなく駆虫効果が得られたので、その方法につ いて紹介する。

8.育成鶏のワクチン接種によるAAアミロイドーシスの病理学的特徴

柳井 徳磨、村上 智亮、石黒 直隆 (岐阜大学)

西 日本の複数の養鶏場で若齢産卵鶏にワクチン投与に関連してAAアミロイドーシス集団発生がみられたので、その概要を症例報告する。当該養鶏場では、白色レ グホン系産卵鶏に90日齢でSE不活化ワクチンなど数種類のワクチンを投与していたが、2009年頃からワクチン接種後の減耗率上昇がみられ (1.4~2.0%)、死亡鶏ではワクチン接種部における細菌の二次感染を伴う高度な腫脹や、出血を伴う肝腫大、脾腫、小腸粘膜出血がしばしば認められ た。若鶏の集団死はワクチン投与の2~3週後に集中して発生しており、組織学的に全身性アミロイドーシスがみられ、また壊死性出血性肝炎がしばしばみられ た。減耗率の上昇はSEワクチンの投与量と比例していたことから、ワクチン接種とアミロイドーシス発症の関係性が考えられた。見かけ上健康なワクチン接種 鶏25羽および未接種鶏5羽を剖検したところ、ワクチン接種鶏25羽中22羽にアミロイド沈着が確認された。したがって、ワクチン接種により育成鶏に潜在 的なAAアミロイドーシスが誘発される可能性がある。これらの病態は、長期飼育により消失傾向がみられるものの、1年以上経過しても検出された。