果樹研究所

一押し旬の話題

2015年1月16日

縁起物

鏡餅

2015年が始まった。

新年を迎える有り様は、ここ20年ほどの間に様変わりしてしまい(少なくとも私が30代の頃までは、1月1日から開いているお店はなかった)、おせち料理等の保存の利く料理を準備しなくても正月を過ごせるようになった。食料品を買いだめをする必要もなくなり、外的環境でいえば通常の一日と何ら変わることがない日になってしまった。・・・昔の正月は、街中が静かだった・・・。

そのせいか、便利にはなったものの、新年を迎えることの静謐さ(せいひつさ)や厳かさ(おごそかさ)が、昔に比べて薄れてきたような気がする。
それでも、新たな年が始まるということは、生活のサイクルのなかでの一つの区切りであり、自分の生き方を考えるきっかけにはなる。
年末に、おせち料理を作り、注連飾り(しめかざり)や鏡餅を飾り、新年を迎える準備をする。年が明けたら、おせちを食べ、神社仏閣に参拝して旧年への感謝と新年の祈願をする。そこには、新年という新たな区切りを迎えるにあたって、変わりたい、変えたいと願望する自分がいる。 

橙の品種「カブス」
橙の品種「カブス」。
果皮に特有のにおいがあることから、
「臭橙(シュウトウ)」とも呼ばれる。

四季折々のいろいろな場面で、日本人は縁起を担ぐ。お正月はその最たるもので、おせち料理の黒豆、数の子、海老等等の食材にはそれぞれおめでたい意味がある。同様に、注連飾りや鏡餅も飾る意味があり、鏡餅の上に据えられている橙(だいだい)も縁起が良いため飾られている。
橙は、代々とも称され、インドヒマラヤ地方が原産のカンキツであり、日本にはかなり古い時代に中国から渡来したとされている。成熟した果実が落果しにくく、収穫しなければ同一樹で新旧代々の果実を見られることから、子孫が代々繁栄することに通じるため、「代々」の名が生まれ、正月飾りに用いられるようになった。今のように科学や医学が発達していない時代、人々は自然に対する畏敬のなかで、自然の不思議な現象に自分の願望を重ねた。
橙の果肉は多汁で芳香に富むが、酸味が強いことから、生食には向かず、食酢やマーマレードとして利用されている。農林水産省の統計(平成23年産特産果樹生産動態等調査)によると、930t余りが出荷されており、出荷の多い順で言うと、第1位和歌山県、第2位静岡県、第3位福岡県となっている。

蛇足ではあるが、縁起を担ぐ延長線上にあるのが、忌み言葉だ。古代日本では、言葉には不思議な霊力が宿っており、発した言葉にはその力が働き言葉通りの事象が起こると信じられていた。
その「言霊(ことだま)」思想が、綿々と現代の日本人にも根付いている。
受験や結婚式で使っていけないと言われる言葉は、皆さんも知っていよう。「スルメ」を「アタリメ」と言ったり、宴会の終わりを「お開き」と言ったり、鏡餅を割ることを「鏡開き」と言ったりする言い換えもそうだ。
「ナシ(梨)」は、「無し」に通じることから「有りの実」とも言われた。

昨年は、2月の大雪、西日本における夏の日照不足、度重なる台風の襲来など、天候不順に苛(さい)まれた一年だった。
今年は、良い天候に恵まれ、美味しい果物が生産されることを切に願っている。