理事長メッセージ

農業・食品産業を取り巻く状況は大きく変化しています。新型コロナウイルスのパンデミックによりフードチェーンの脆弱さが露呈し、食料安全保障の重要性が再認識されました。また、担い手不足、地域社会の衰退、自然災害の頻発、地球温暖化の進行等への対応も急務です。一方、世界に目を向けると、大幅な人口増加にともなってグローバル食料市場が拡大すると予測されており、今まさに「農産物・食品の輸出を拡大する大きなビジネスチャンス」を迎えています。

理事長 久間 和生
(略歴はこちらです)

私は、農業・食品産業は、「伸びしろの大きな成長産業」で、地方創生を促進するとともに、我が国の経済成長に貢献すると考えています。また、農業・畜産・土地由来の温室効果ガス排出量は、世界では全体の24%にも達しており、農作物・食品の生産性向上と温室効果ガス排出削減を両立することが重要課題となっています。そこで、2018年4月の理事長就任以来、農業・食品分野における「Society 5.0」の実現によって、

  • ①「食料自給率向上と食料安全保障」
  • ②「農産物・食品の産業競争力強化と輸出拡大」
  • ③「生産性向上と環境保全の両立」

に貢献することを、農研機構の目標として掲げてきました。

また、研究開発戦略、成果の実用化、組織連携、人工知能等のICTの導入、知財・国際標準化、広報、人材育成等の様々な面から改革し、例えば、農業研究とAI研究の融合、民間等との共同研究、研究成果の普及等を拡大しました。
2021年4月からは、新たに策定した第5期中長期計画の組織や運営方法によって、農業・食品分野における「Society 5.0」実現に向けた研究開発を加速します。具体的には、「アグリ・フードビジネス」、「スマート生産システム」、「アグリバイオシステム」、「ロバスト農業システム」の4つの柱を立てて、研究開発を推進します。また、基盤技術研究本部を創設し、AI、ロボティクス、バイオテクノロジー、精密分析等の研究基盤技術、統合データベースや遺伝資源等の共通基盤を強化して、農研機構全体、ひいては我が国全体の研究開発力向上を図ります。
農研機構は、第5期中長期研究計画において、出口戦略を明確にして、基礎から実用化までのそれぞれのステージで、切れ目無く一流の成果を創出する「世界に冠たる一流の研究組織」になることを目指します。関係機関の皆様には、絶大なご支援・ご協力をお願いします。