農業機械研究部門

緊プロ開発機のご紹介

乗用型トラクターの片ブレーキ防止装置

(2013年発表)

ブレーキ連結忘れによる片ブレーキ誤操作が原因の転倒事故を防止

  • 左右ブレーキは常に連結状態とし、連結忘れを解消
  • 片ブレーキが必要なときだけ、その都度、左足で連結を簡単解除

写真

1.利用のメリット

乗用トラクタの左右ブレーキペダルを連結しないまま、走行中誤って片方だけで急ブレーキを踏むと思わぬ急旋回が生じ、転落転倒の重大死傷事故につながる場合がある。開発装置を装備した乗用トラクタならば、この種の事故を未然に防止することができる上に、作業中の片ブレーキ操作も容易に可能。

2.開発機の概要

  • 乗用トラクタには、作業中に枕地で小回りの利いた旋回を行う等のため、左右別々にブレーキが利くようブレーキペダルが2つ装備されている。片方のブレーキだけを踏む操作を「片ブレーキ」と呼んでいる。
  • 従来、左右のブレーキペダルは連結金具によりかけ外しが可能な構造になっており、片ブレーキ操作を必要とする作業を行うときは連結金具を外し、作業終了後、ほ場から出る前に連結金具をかける必要がある。これは、急ブレーキをかけるときに誤って片ブレーキを踏むと、急旋回して道路やほ場から転落・転倒する場合があるためである。
  • 開発装置は、連結金具のかけ忘れによる誤操作を防ぐため、左右ブレーキを常時、連結状態とし、片ブレーキ操作が必要なときのみ、その都度、ブレーキ連結を解除する方式とした。

3.活用上の留意点

2014年度以降、対応可能な新機種から順次、標準装備される予定である。

安全かつ円滑な作業を行うため、操作方法を十分に理解し、操作に慣れておくことが望ましい。

4.共同研究実施会社

株式会社IHIシバウラ、井関農機株式会社、株式会社クボタ、三菱農機株式会社、ヤンマー株式会社

5.主要諸元・構造

本装置は、左右ブレーキペダルの連結を解除するための「連結解除ペダル」と、連結解除ペダルの動作の可否を切り替える「ロックレバー」から構成される。片ブレーキ操作が必要な作業を行う場合、ロックレバーを「解除」に操作すると計器板の赤色表示ランプが点灯し、連結解除ペダルの使用が可能となる。この状態でも左右ブレーキはまだ連結されており、運転者が左足で連結解除ペダルを踏むと左右のブレーキ連結が解除される。連結解除ペダル及びブレーキペダルを元の位置に戻すと、左右のブレーキは自動で連結される。作業終了後は、ロックレバーを「ロック」に操作することにより、誤って連結解除ペダルを踏んでも、ブレーキ連結は解除されない。

表-開発装置の主要諸元、図-開発装置の概要

6.作業性能

  • 左右のブレーキペダルは常に連結されているため、誤って片ブレーキを踏むことがない。また、ロックレバーは、運転者の手元近くに配置されているため、従来のブレーキペダル連結金具のように身をかがめて操作する必要がない。
  • 片ブレーキ操作が必要な作業では、ロックレバーを解除側に操作しておけば、左足で連結解除ペダルを踏むだけで片ブレーキ操作が容易に行える。
  • 農家等のトラクタ作業精通者だけでなく、不慣れな被験者も含む計28名により、開発装置を搭載したトラクタでロータリ耕やプラウ耕を行ったほ場試験では、急制動時における左右ブレーキの連結が確実に保持されることが確認され、片ブレーキの操作性についても概ね良好であり、実用的なレベルに達しているとの評価を得た。

(試験場所:埼玉県さいたま市、埼玉県鴻巣市、茨城県水戸市)