九州沖縄農業研究センター

スクミリンゴガイ

移植水田

水稲移植栽培でのスクミリンゴガイ対策

[基本的な考え方]
移植後の浅水管理と成苗移植を併用した耕種的な方法で被害回避が可能です。深水水田など、耕種的な方法だけではうまくゆかない時のみ農薬を使用します。

1)耕種的な被害回避法

(1)浅水管理

浅水管理 初期
浅水管理 下;後期
浅水管理(上;初期、下;後期 )

貝が水稲に被害を及ぼすのは田植え後、約3週間までで、その間、水深を出来るだけ浅く保ちます。水深1cm以下が理想ですが、4cm以下に保つと実害があまり出ません(貝の生態を参照)。
ポイントは圃場の均平です。圃場が凸凹だと深いところの株が食害され、一方、土が水から長時間露出すると除草剤の効き目が劣ってきます。田植え前に圃場の高低を修正するとともに、被害が生じやすい田植え直後は極く浅水とし(一部の土が水面上に出ても)、徐々に水深を増加させ、発芽してくる雑草を貝に食べさせるなどの工夫が必要です。

この方法に熟練すると、除草剤散布を省くことも可能になります。また、除草剤散布は貝の餌となる雑草の芽生えを抑制し、結果としてイネの被害を助長します。

(2)成苗植え

セル式の育苗箱
セル式の育苗箱

貝は柔らかい小さな稲を好んで食害します。稚苗を移植すると被害が拡大し、頑丈な成苗ほど被害が回避されます。スクミリンゴガイが生息している水田では4葉期(不完全葉は数えない)以上の中苗や成苗を植えることが重要です。頑強な苗を作るセル育苗なども被害軽減化に役立ちます 。

(3)水路からの貝の侵入防止

水路から2cm以上の貝が大量に侵入する水田では侵入防止策が望まれます。水口に1~2cmメッシュの金網や網袋を設置すると被害軽減に効果があります。侵入防止網をご覧ください。

(4)その他

冬季の耕耘や、殺貝を意図した丹念な耕耘(直播での被害回避を参照)で、田植え前の貝密度を減少させることができます。田植え前後に2cm以上の貝を手で取り除く原始的な方法も被害回避効果が期待できます。

2)化学的防除法

農薬による防除は深水水田や何らかの理由で耕種的な方法でうまくいかない場合の選択肢です。具体的な用法等は登録農薬一覧や各農薬の説明書をご覧ください。

  • メタアルデヒド粒剤(商品名:スクミノン、スクミノン5)は毒餌(ベイト)剤で、スクミリンゴガイが摂食すると死亡したり行動抑制が生じます。耐水性なので多雨条件でも比較的に効果が持続します。チオシクラム粒剤(商品名:スクミハンター)も有効成分が徐放性なので比較的長期間効果が持続します。
  • IBP粒剤やカルタップ粒剤など田植え後に散布する粒剤では貝の死亡率は必ずしも高くありませんが、食害は抑えられます。散布後、多雨条件になると薬剤が流亡し効果が劣ります。
  • 石灰窒素は稲に対して薬害があるので稲の生育中は使用できません。田植え前か、秋の収穫後に水田に施用し殺貝します。

3)生物的防除法

合鴨は貝が大好き
合鴨は貝が大好き

合鴨や鯉を放した水田では、貝密度が著しく低減します。翌年、水路からの貝の侵入がなければ田植え時に貝を防除する必要がありません。東南アジアでは収穫後アヒルを圃場に放して貝を防除しています。