食品研究部門

感覚機能解析ユニット

役割

「おいしさ」は本来、体に益になるものを取り入れるための感情です。私たちは、味、香、見た目といった感覚とおいしさの関係、おいしさと生理状態の関係を解明することで、おいしさがどのように健康機能に関わっているのかを科学的に明らかにする研究を行っています。

主な研究テーマ

・味を受け取る仕組みと味の感受性、生理応答との関係解明

「味」という感覚は、味覚受容体というセンサータンパク質が味物質を感知するところから始まります。受容体が受け取った味の情報は、そのまま脳まで伝わるのではなく、香りや見た目といった外的環境、体調のような内的環境で大きく変化します。私たちは、これまで、味覚受容体がどのように味物質と結合して味の情報を受け取るかについて研究を進めてきました。この成果を活かして、味覚受容体の活性と実際に頭で感じる味の強さや生理応答との関係を明らかにしていきます。(日下部)

図:味覚受容体の活性と実際に頭で感じる味の強さや生理応答との関係

食品のおいしさに関する味と匂いの研究

厚生労働省や日本高血圧学会は、脳卒中や循環器疾患のリスクを下げるため、減塩を強く推奨していますが、単に塩を減らしただけの食事は風味がぼやけておいしく感じられません。塩は食品に塩味を付与するだけでなく、全体の味をはっきりさせたり、食品の香りを感じやすくさせたりする力を持っているからです。和菓子や果物の甘味の輪郭をはっきりさせるために、隠し味として塩を使うことはよく知られた技法です。適度に塩味の効いた副菜があると、ご飯が進む。水分を多く含み、油脂をほとんど含まない米飯をたくさん食べることで、少ない脂質量でも満足感が得られるところも和食の利点です。このような塩の複合的な機能は、最先端の機器を使っても評価することはできません。動物行動学実験とヒト官能試験を組み合わせることで、塩分が少なくても、塩味としての機能を感じられる素材や技法を開発することを目指しています。(河合)

『食べる』ということについての神経科学的研究

私たちが食事をするとき、お腹が空いたからたくさん食べたい、疲れているから温かい消化の良いものを食べたい、などといろいろな考えを巡らせます。日々の食事において食品から受けとるさまざまな感覚入力に対して、体と脳はどのような仕組みで反応して、どんな作用をもたらしているのでしょうか。食事をしたときの自律神経活動や体温などの生理的状態と、摂食中枢を中心とした神経活動を解析することで、食品がもたらす感覚に応答する仕組みを神経科学的に明らかにすることを目指します。(小川)

メンバー

ユニット長

日下部 裕子(くさかべ ゆうこ)/専門:食品機能学、分子生理学

上級研究員

河合 崇行(かわい たかゆき)/専門:栄養生理学

研究員

堀江 芙由美 (ほりえ ふゆみ)/専門:食品機能学

小川 雪乃(おがわ ゆきの)/専門:神経生理学、システム生理学

西部 美咲(にしべ みさき)/専門:食品機能学

主要成果

こちらをご覧ください。