畜産研究部門

食肉制御ユニット

蛍光色素を融合した培養筋細胞の共焦点レーザー顕微鏡写真。緑色はミオシン重鎖、赤色はアクチニンでZ線の位置を示す。

食肉のやわらかさや保水性等の赤身肉部分の性質は、それを構成する多様なタンパク質の性質や状態で決まります。食肉タンパク質の構成や一つ一つの性質を決めるのは遺伝子とその発現を調節するさまざまな因子です。食肉はすなわち家畜の筋肉であり、筋肉形成過程を分子レベルで理解することは食肉の増産や肉質向上の基盤として重要です。

陸上アスリートを例にした場合、マラソンランナーに特徴的な持久性の筋肉と、スプリンターに特徴的な瞬発性の筋肉とでは、運動生理学的または代謝的な特性が異なります。こうした筋肉の違いは、ウシ1頭の個体の中でも、部位の違いとして観察できます。ウシはほとんど休むことなく反芻を繰り返しているため咬筋等、頬の筋肉が持久性に富む一方、腿に位置する半腱様筋等の筋肉は瞬発性に富んでいます。両筋肉の間では、色、生理学的特性、生化学的成分の構成、食肉としての物性等が異なります。同じ動物1頭の体の中でこのような違いはどのように形成されるのでしょうか? そもそも、精緻につくられる筋肉の分子集合体構造(写真)はどのように形成されていくのでしょうか? 筋肉形成のプロセスによって食肉はどのように変わるのでしょうか?

こうした未解決課題が多く残されていますが、私たちはこれまでに、代謝特性が異なる筋肉部位の間で、と畜後の貯蔵期間中にイノシン酸等の成分の生成が異なることをメタボロミクス(代謝成分の網羅的解析)により明らかにする等、筋肉の性質や成分に着目した肉質形成に関わる研究に取り組んできました。食肉制御ユニットでは家畜の筋肉や食肉、細胞、モデル動物等を用い、筋肉の細胞がどのように形成されていくのか、家畜の筋肉部位間にみられる違いがどの段階でどのように形成されるか、さらに家畜の筋肉(筋細胞)が発生段階や飼養環境の影響をうけてどのように変化するかについて、分子生物学的技術や網羅的解析技術を駆使して解明を進め、肉質向上や食肉の効率的増産等、技術開発の基盤に貢献していきます。


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