中央農業研究センター

土壌肥料研究領域

色も性質も異なるさまざまな土壌

野菜畑や果樹・茶園では、長年の耕作により土壌に過剰の養分が蓄積し、生理障害や病害の発生助長や環境への負荷が懸念されています。一方、水田では省力・低コスト化に伴い、堆肥や土壌改良資材の投入量が減少し、また乾田化や田畑輪換によって土壌有機物の分解が進むことにより、土壌の化学性・物理性の低下が顕在化しています。また、平成20年の肥料高騰以来、肥料価格は高止まりの状態が続いており、生産現場からは施肥コストの低減が求められています。そこで、土壌診断による施肥の適正化や緑肥等の有機性資源の高度利用による化学肥料削減と土作り技術、水田輪作体系での合理的施肥・土壌管理技術に関する研究を実施しています。土壌診断はある程度実施されていますが、水稲ではおよそ33haに1点、野菜でも2.3haに1点の割合であり、分析点数がまだ十分ではありません。また、土壌診断を担ってきた設備の老朽化や人材不足、肥料設計に反映させるための分析の迅速化などの課題があります。そうした課題を解決するため、化学分析未経験者でも迅速・安価に実施できる土壌化学性の簡易評価法の開発に取り組んでいます。また、水稲を中心に分析結果に応じた適正な施肥量を示せるように研究を進めています。さらに、排水性などの土壌物理性の面的評価によって、低収となる土壌要因の解明を進めています。
中長期的研究テーマとして、今後予想される世界の食糧増産に伴う肥料需給の逼迫に備えるため、菌根菌などの有用な植物共生微生物の養分供給能や作物生育促進機能を利用した低投入安定生産技術の開発に取り組んでいます。営農管理が土壌微生物性に及ぼす影響の解明などの基礎的研究も実施しています。また、近年、急速に進歩してきたメタボローム解析により、香り成分などの作物代謝成分の変動を明らかにし、将来的には農産物の品質向上のための肥培管理技術に繋げたいと考えています。これらの幅広い研究を推進するために、外部競争的資金の獲得により、公設試験研究機関、普及関係組織、大学、民間企業等と積極的に連携しています。

領域長

大脇 良成(おおわき よしなり)

所属グループ