中央農業研究センター

線虫害グループ

ネコブセンチュウ(右枠)の寄生でこぶだらけになったナス科野菜の根系
線虫害グループでは、植物寄生性線虫の分類、生態解明、制御技術の開発などを行っています。作物体地上部を加害する病害虫と異なり、土壌に生息する線虫を見たことがある人はほとんどいないと思います。しかし線虫は、畑作における連作障害の一因であり、果菜類生産の2割に達する収益減をもたらすと言われています。線虫は体長1ミリに満たない微小な生物ですが、れっきとした動物であり、カビや細菌などの微生物とも、また、昆虫とも異なる存在です。そのため、その取り扱いには独特の知識や技術を必要とします。当グループでは、こうした線虫達の特性や植物との相互作用などを解明し、化学農薬への依存を減らした制御技術を開発することを目指しています。過去には、複数の生物防除資材の組み合わせによる線虫被害の低減技術の開発や、植物における線虫抵抗性の発現機構の解明などを行ってきました。現在は、線虫抵抗性台木の探索及び利用技術の開発、作物種や品種ごとの宿主特性の解明、土壌還元消毒法の改良による被害低減技術の開発などを行っています。このほかに、植木など海外向けの輸出品に寄生する線虫種の検出技術の開発なども行い、日本の生産物の輸出増加にも貢献しようとしています。
線虫についてもDNAレベルでの特性解明や検出技術が不可欠となっていますが、一方で、顕微鏡による形態や行動の観察は、今も重要な作業です。当グループのメンバーはこうした新旧の技術を駆使し、シャーレから圃場までの様々なレベルにおいて研究活動を展開しています。日本では、大学においても線虫学の専門家や専門研究室が少ないため、当グループでは、地方自治体の研究機関はもとより、大学や海外の研究機関からも幅広く研修生を受け入れ、講習会を開催しています。また、各地から収集した線虫種や系統約150点の継代維持を行い、各地の研究機関や研究者の求めに応じて配布するジーンバンク事業にも積極的に貢献しています。

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