動物衛生研究部門

豚コレラ

病原体

豚コレラウイルスは豚及びいのししを宿主とし、反芻動物を宿主とするBVDウイルスや羊のボーダー病(BD)ウイルスと同じペスチウイルス属の仲間であって、大きくは日本脳炎ウイルスやウェストナイルウイルスなどと同じフラビウイルス科に属している(表2及び図4)。よって、遺伝子として一本鎖(+)RNAを有し、増殖の際、遺伝子から一つの大きな複合蛋白質(ポリプロテイン)が合成され、タンパク質分解酵素によって複数の蛋白質に分断されてそれぞれの役目を果たす蛋白質が作られる(図5)。豚コレラウイルスの生物学的特徴としては、(1)培養細胞で増殖するものの、普通細胞変性効果(CPE)を伴わないこと(図6)、(2)ニューカッスル病ウイルスの増殖・CPEを増強すること(END現象)が挙げられる。これらは一部のBVDウイルスやBDウイルスといったペスチウイルス(豚コレラウイルス以外を一括りにして「反芻動物ペスチウイルス」ともいう。)にも共通する現象であるが、この特徴のために一般的なウイルス検査と違って豚コレラの検査はやや特殊な方法を用いることとなっている。また、豚コレラウイルスと反芻動物ペスチウイルスはお互い抗原的に類似性の高い部分があり、それらの抗体の間では交差反応を起こす。

豚コレラウイルス粒子は大きさは40~50nmの外套膜(エンベロープ)を有する不整球形であるが、培養液中のウイルス粒子は電子顕微鏡によって確認しにくい。ウイルスは65°C30分あるいは71°C1分の加熱処理によって完全に不活化する。しかし、0°C以下の肉中では不活化されることはなく、冷凍肉中では4年以上も安定で、チルド状態の肉中でも85日間は不活化されないといわれる。一方、肉を37°Cに加温しても7日~15日間、50°Cでは3日間は生残し、血液中となると完全な不活化には68°C30分を要するとの報告もある。ウイルスの存在状況やわずかな温度の違いによって不活化に影響を及ぼすことから、国では加熱処理の有効温度(肉なら中心温度)を70°C30分以上あるいは80°C3分以上と定めている。豚コレラウイルスはpHの影響も受け、中性から弱アルカリ域では安定しているが、酸性や強アルカリ域では不安定である。生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)といったアルカリ消毒剤や次亜塩素酸ナトリウムはもちろんのこと、エンベロープを有していることから、逆性石鹸(四級アンモニウム塩)によっても不活化される。加熱処理と同様、有機物や酸剤の混入状況によってはその効果は大きく変動することから、消毒や不活化処理等に際して注意が必要である。

表2.ウイルスの分類と宿主域

表2.ウイルスの分類と宿主域

図4. 遺伝子によるペスチウイルス属(フラビウイルス科)の分類

図4. 遺伝子によるペスチウイルス属(フラビウイルス科)の分類

図5.豚コレラウイルスのゲノム構造と蛋白質合成

図5.豚コレラウイルスのゲノム構造と蛋白質合成

図6.豚コレラウイルスの生物学的特徴(非細胞病原性)

図6.豚コレラウイルスの生物学的特徴(非細胞病原性)