畜産研究部門

飼料作物研究領域

オーチャードグラスの育成品種「まきばたろう」

TPPを始めとする貿易自由化の流れの中では、経営規模の拡大はコスト削減のために必須です。しかし、家族労働に頼る畜産農家では、規模拡大によって輸入飼料依存が増大し、これが穀物価格高騰や為替変動に経営を圧迫される事態を生み、家畜排泄物処理や耕作放棄地の問題を深刻にしました。そのため、近年はコントラクターや農業機械共同利用組織、TMRセンターを整備、活用することで、自給飼料生産に重点を置きつつ、農家の労働荷重の軽減・分散を図り、規模拡大と畜産物の高品質化を実現する取り組みが進められています。

飼料作物研究領域では、このような新たな自給飼料生産体系における飼料作物の生産に関する研究開発を行っています。飼料作物は多くの作物・種を含みますが、畑・水田で栽培される一年生作物と高原草地などで栽培・利用される多年生牧草に大きく分けることができます。一年生作物に関しては、温暖地向けトウモロコシ及びイタリアンライグラスの新品種育成、二毛作における低コスト安定多収栽培技術や転作田における湿害回避技術、堆厩肥等の効率的利用と環境負荷低減、過度に農薬に依存しない病害虫防除に関する研究を、多年生牧草に関しては、寒冷地・温暖地向けオーチャードグラスの新品種育成とライグラス類・フェストロリウムの環境耐性と永続性の向上に関する研究を行っております。さらに、これら作物とその近縁種植物のゲノム情報の活用や革新的育種技術を用いた画期的新品種・新作物の素材開発を行っております。

また、大気中の二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルエネルギー源となるバイオマス植物の開発と利用、南西諸島や東南アジアで広く利用される暖地型牧草に関する基礎的な研究に取り組んでいます。

飼料作物研究領域で開発した新品種ならびに新技術は、農家等の実需者における現地試験を通じて実証し、それを広く普及させることによって、我が国の土地利用型畜産のさらなる発展に貢献するものです。


領域長

奥村 健治(おくむら けんじ)

所属研究ユニット