新たな食料・農業・農村基本計画と農作業安全
R2年5月 井上 秀彦
令和2年3月31日に新たな食料・農業・農村基本計画
が閣議決定されました。本計画は国が10年程度の中長期的に取り組むべき方針を定めたもので、概ね5年ごとに変更されています。時代背景や情勢に応じた内容が盛り込まれており、ご一読いただくと農業政策の方向性を捉えることが出来ます。
平成22年度版から農作業安全についても方針が示されるようになりました。令和2年版では今までよりも具体的な方針が示されており、国として農作業安全対策を推進していくことが改めて見て取れます。以下に農作業安全についての記述を抜粋します。
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第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策
2.農業の持続的な発展に関する施策
(6)需要構造等の変化に対応した生産基盤の強化と流通・加工構造の合理化
④農業生産工程管理の推進と効果的な農作業安全対策の展開
イ 農作業安全対策の展開
農業は、就業人口当たりの死亡事故発生率が他産業と比べて高い状況にある。このため、農作業事故の発生状況を把握し、
調査・分析結果を活用することで、リスクの高い作業を行う場合に必要な安全対策の徹底を促すなど、
地域の営農実態に応じた農作業安全対策を推進する。
また、GAPの実践による農作業事故リスクの低減効果を検証し、リスク管理のポイントを明確にすることにより、
農作業事故の防止対策を効果的に推進する。加えて、効果的な暑熱対策の実践など熱中症対策の推進、
労災保険の特別加入の促進、安全性の高い機械の開発や普及、現場実態や地域のニーズに応じた法面勾配や
耕作道路幅員等の設計上の工夫など農作業の安全に配慮した農業生産基盤整備に加え、農業水利施設の点検・操作時におけ
る安全対策を推進する。
さらに、農業だけではなく、林業、水産業、食品産業分野ともに連携し、
関連産業を挙げた作業安全意識の向上を図る運動など総合的な対策を推進する。
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食料・農業・農村基本計画は農政の方針ではありますが、実際の生産現場で働かれる皆様にとっても、農作業事故の実態を把握すること、GAPの理念を理解すること、 熱中症対策を知ることなどはすぐに取り組めて有効なことだと思います。過去の本コラムでも農作業事故の実態、 GAP、熱中症対策をご紹介いたしましたので、そちらももう一度ご一読いただけますと幸いです。