農作業安全コラム

「ない」安全から「ある」安全へ

R4年1月 冨田 宗樹

 あけましておめでとうございます。昨年は多くの皆様にとって大変な一年であったと思います。今年は明るい兆しの見える一年となるよう願ってやみません。

 年頭に当たり、改めて「安全」とは何でしょうか?日本工業規格(JIS) Z 8051:2015 (ISO/IEC Guide 51:2014)では、「許容不可能なリスクがないこと」とされています。規格の性格上、様々な関係者が受け入れられる定義であることは頭に置く必要があります。しかし、単純に『リスクが「ない」こと』から『安全で「ある」こと』を導けるといえるでしょうか。例えば、「豊かである」とは「貧しくない」というだけではなく、それ以上のことですが、安全はどうでしょうか。
 そう考えた時、WHO(世界保健機構)の健康の定義が参考になります。それは、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(日本WHO協会HP)」というものです。このうち、元の英文で「満たされた」の部分に用いられているのがwell-being(ウェルビーイング)という語です。これは、近年、産業安全の分野でも注目されています。日本語に訳しにくい語であるため、日本のWebサイトではWell-beingについて、様々な解釈が紹介されています。その中で私が注目したのは「その人らしい最適な暮らし」という解釈(https://www.fdcnet.ac.jp/ncol/faculty/learn外部リンク)です。これらを参考に、私は、「自分や他人の身体や能力、意思をお互いに大切している状態」と理解しています。
 そこで、『安全で「ある」こと』を、上述の健康の定義と同様に、『well-beingがあること』と考えてみましょう。すると、仕事によってケガを負うこと、あるいは職業病になることは、当然well-beingではありませんので、まずは、これまでと同様に防止する必要があります。同時に、ハラスメントや孤立、低待遇、やりがいのない仕事など、その人らしい職業生活を妨害するものも、安全を目指す上では取り除いていくべきといえます。

 本年5月には、職場での安全、健康とWell-beingの実現を目指す国際的な運動である、”Vision ZERO”のサミット(Vision ZERO Summit Japan 2022)が日本で開催されます。これは、今までより広く深い意味を持つ、いわば『「ある」安全』を目指す世界的な取り組みの兆しともいえます。
 私達は、「安全」を推進することによって、何が「ある」農業現場を目指しているのでしょうか。当機構の中でも考えを深め、実践していくべきテーマと、決意を新たにしています。

 

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