農作業安全コラム

春遠からじ

R4年3月 原田 泰弘

 「この春ばかり あさぎよめすな」これは確か今昔物語でしたか。落花を詠んだ和歌の下の句ですね。桜の木の周りが薄桃色に染まり、桜花に包まれるようなあの感覚は私も大好きで「朝清め(掃除)してくれるな」には大いに共感いたします。もう桜?所によってはそう感じる向きもいらっしゃいますか。しかしながら、巷の話題は既に春。私にとりまして春といえば桜。一体いつの間に刷り込まれてしまったのでしょうか。

 さて、美しくあるものは儚く、ときには厄介モノにもなってしまうもの。掃いても止めどなく落ちてきますし、箒に絡み、風に舞って成果が上がりません。靴裏に溜まった塊が落ちてきたり、泥落とし用のマットにも限界があり、室内に持ち込んでしまうことも。また、停めていた車を水玉模様に変え、離れたところにも吹き溜まりを作り、そして朽ちる。「風流ですねえ。」と言われて、何が?と首を傾げると落ちてくる・・・挙げれば切りがありません。
 こうなると、もう割り切るしかございません。つまり諦める部分と都度掃除する部分と汚されない部分とを分け、この時期は限定された場所だけを掃除することになります。そろそろ何の話題かお気付きかもしれませんね。ご明察。舞う粉塵や飛沫を避けられないのが農作業。それは土であったり、肥料や農薬であったり、いろいろですが、用具を使う前に洗浄の工程が加わるのも何だか億劫ですし、怪我などに繋がると残念です。ということで整理整頓ですが、山(繁忙期)が次々訪れて本格的な掃除の時間などを割けないのも農作業ですので、多少でも余裕のあるとき、できれば日頃から整理しておきたいもの。ポイントは、作業する場所と保管する場所をきちんと分けられるかということと、掃除する場所をどこまで小さく、少なくまとめられるか、それから掃除しやすくできるかということになりますね。何だか先頃流行った片付けの本みたいになってきましたが、スミマセン。それらの有用な知識は勉強しておりませんので、私のやり方になってしまいますが、先ずやるのは不要なモノや近頃使っていないモノの徹底的な処分です。まだ使えるとか、何かのために取っておくのは止めました。初めは思い切りが必要でしたが、やると妙に爽快感があります。多少でも空間が確保できればしめたもの。この広がった場所は、作業用なのか、保管用なのか、「何を」「どのように」まで具体的にイメージします。視覚的に邪魔といいますか、美観を損なうモノがあれば、改善するか排除します。形から入ることも大切で、折角のこの場所を気持ちよく活用し、視覚的な引っ掛かりに動作を変えられないためにも美観を守ることは必要です。あとは想定に従って整理整頓です。当面掃除しない場所も確保できると良いですね。作業でも保管でも具体的にイメージできていれば大丈夫。後で微調整すれば良いだけですから。

 さて、桜。満開のときには、その圧倒されるような絶対的な美しさに魅入ってしまいますが、散りゆく様にも惹かれてしまうのは何故でしょうか。それから春。そういえば期待と不安とを抱えるような新しいことのはじまりには、いつも桜が咲き誇っていたかも。凡人の私には、桜の下に何かが埋まっているような発想はできませんでしたが、不安を和らげてもらうことはあったような気がいたします。

 

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