農作業安全コラム

「右」、「左」の世界

H29年12月 菊池 豊

 人間の「手」、「足」、「目」に「右利き」、「左利き」があるそうです。私の「手」は左利きです。小さい頃にペンの持ち方などを右に矯正されたので、両利きの場合もあります。そのこともあって「右」、「左」のことで混乱したり、不便を感じたりすることがありました。

 農業機械においても、あまり知られていない「右」、「左」の世界があります。多くは右ネジを使用しているのですが、刈払機の刈刃を固定するネジは左ネジです。これは、刈払機の刈刃が上から見て左回り(反時計)方向に回転しているため、ネジが緩まないようにするためなのだそうです。

 また、グレンタンク式のコンバインの排出オーガの操作レバーには、昔から「左回り」、「右回り」と表示されています。これについて私は少々混乱します。例えば、運転席から前向きの姿勢で、排出オーガを「左回り」操作すると、「左側」へ回転し(図の②)、そして、機械の後方を過ぎると運転者の「右側」へ回転していくことになります(図の③)。運転席から後ろ向きの姿勢で操作すると、運転者中心に見れば逆のことが起こります。そのため、時折「時計回り」、「反時計回り」と表記してはどうかと話題にしますが、取り合ってくれる方はいません。

 なお、20年前の安全鑑定基準改訂時には、操作ミスを解消しようと主要な運転・操作装置の配置について検討したものの、農業機械より普及している自動車との整合性、機械規格、各社の特許、運転席左右配置によるスペース、従来機の操作に慣れたユーザーの意見など調整に難航したことを記憶しています。詳しくは、現行の基準をご参照いただきたいのですが、ブレーキペダルは運転席の右側、アクセルレバーは前方か右側、アクセルペダルは右側、クラッチペダルは左側、歩行型機械のクラッチは原則として左側としています。変速レバーについて規定はありません。

 さらに、これまでのレバー、ペダルに加えて、家電のように農業機械もスマホ操作できるようになると、安全操作のためにどのようなルールが必要かと思うこの頃です。



 

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