農作業安全コラム

農業の主役のための設計・開発を

H29年9月 田中 正浩

 農業の主役は誰かと聞かれて、皆様はどのような人をイメージしますか?華麗にトラクターを操る筋骨隆々の中年男性の姿でしょうか?あるいは大粒の汗を流しながら収穫を行う若者の姿でしょうか?

 現在、わが国の農業就業人口は182万人で、そのうち65歳以上の高齢者の方は121万人となっています。また、平成27年の新規就農者数は6万5千人で、そのうち65%を50歳以上の方が占めています
農林水産省「農業労働力に関する統計」外部リンク(参照2017-8-23))。このようなことから、日本の農業の問題点として高齢化や若者の農業離れ等が頻繁に取り上げられていますが、素直な見方をすれば、今日の日本の農業は50代、60代以降の年配の方々に支えられており、今後もその可能性が高いことがわかります。

 私は、日本の農業の主役はこのような50代、または60代以降のシニア世代や高齢者の方々だと思っております。その主役の方々が日々の作業で使いやすく、また安全であるための機械設計が求められる、というのは自然な流れではないでしょうか。

 農研機構では、高齢者がより見えやすい安全標識を目指して、高齢者が視認できる色や文字の大きさについて調査・検討を行い、以下の知見を得ています。



このような研究結果が、シニア世代や高齢者の方々が使いやすく、安全な農業機械の設計・開発に繋がれば幸いです。

 話は変わりますが、先日銀行のATMにたくさんの人が並んでいるのを見かけました。様子をうかがうと、どうやら先頭の高齢者の方が機械の操作方法がわからず、何度も失敗していました。結局その方はATMの利用を諦めて窓口の方へ向かっていきました。機械の設計・開発において、常にどのような人が使用するか想定しなければいけないと再認識いたしました。


 

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