稲の主稈・分げつの稈長の比と耐冷性との関係
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[要約]
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穂ばらみ期では主稈の稈長と比較して分げつの稈長が短くなるにつれ耐冷性は直線的に減少する。特に、耐冷性の弱い品種は分げつの稈長が主稈に比べわずか7%短くても稔実指数は20%低下する。一方、開花期では分げつの稈長が主稈の15%短くても稔実指数の低下は5%以内であり、低温ストレスの影響は小さい。
北海道農業試験場・地域基盤研究部・冷害生理研究室
[連絡先]011−857−9321
[部会名]基盤研究
[専門] 栽培
[対象] 稲類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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水稲栽培における気象災害では傷害型冷害の被害が最も大きい。そのうち、穂ばらみ期と開花期耐冷性を個体(株)として評価することは耐冷性の品種間差異の解明とともに耐冷栽培技術を確率する上で重要である。ところが、耐冷性を個体(株)で比較する場合、品種によって分げつので出方が異なるため茎数や稈長が異なり、そのため各穂の耐冷性も異なることが予想される。そこで、分げつの生育状態を稈長で2分(長い方の分げつをT1、短い方の分げつをT2)し、個体(株)としての耐冷性を評価する。
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[成果の内容・特徴]
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1)穂ばらみ期(12℃、4日間処理)のT1分げつ(表1の主稈の稈長より1〜6cm減)では耐冷性の最も弱い「豊光」を除いて主稈に対する稔実歩合の減少の程度は小さい。一方、T2分げつ(同、13〜19cm減)では稔実歩合の低下が大きい(図2)。
2)開花期(12℃、6日間処理)ではT1分げつ(同、1〜10cm減)の稔実歩合は品種全体で主稈と大差なく、T2分げつ(同、13〜19cm減)では稔実歩合の減少は穂ばらみ期と同様大きい(図1)。
3)穂ばらみ期でも開花期でも、特にT2分げつの面実歩合は品種としても耐冷性評価と大きく異なり、耐冷性の強い品種の稔実歩合は必ずしも高くない。
4)主稈の稈長と分げつの稈長の割合(稈長比)と主稈に対する分げつの稔実指数は直線的に減少する。それらの中で、特に耐冷性の最も弱い「豊光」では分げつの稈長が主稈に比べて、わずか7%減少しても稔実歩合は20%以上も低下する。一方、開花期では分げつの稈長の減少が10%の範囲では稔実指数の低下は起こらない。さらに、稈長が15%程度減少しても稔実指数の低下は5%以内の範囲であり、冷温ストレスの影響は小さい(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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1)主稈と分げつを含む総合的な観点から、個体(株)としての品種の耐冷性を評価することができる。
2)開花期では主稈に比べ分げつの稈長が10%程度短くても主稈の耐冷性と同じ評価となる。ところが、個体(株)としての耐冷性の評価の再現性から、穂ばらみ期では時に主稈の稈長と同じ程度の長さの分げつを用いる必要がある。
3)本試験は人工気象室のポット試験であり、圃場における品種の耐冷性を評価することはできない。
[その他]
研究課題名:稲品種の耐冷性発現・生理機構の解明
予算区分:経常
研究期間:平成7年度(7年〜11年)
発表論文等:1.開花期耐冷性に及ぼす主稈と分げつの影響、日作紀、64(別1)、68−69、1995
2.北海道水稲品種の主稈と分げつの開花期耐冷性育種、育種・作物北海道談話会報、36、82−83、1995
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