ばれいしょ体細胞変異からの高品質系統の選抜
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[要約]
ばれいしょの体細胞変異は、調理・加工特性に関する形質にも発現し、効率良く原品種より高品質の変異系統を選抜できる。
北海道農業試験場・畑作研究・ばれいしょ育種研究室
[連絡先]0123−36−8861
[部会名]作物
[専門] 育種
[対象] いも類
[分類] 普及
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[背景・ねらい]
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プロトプラストやカルスを経由した培養クローンは原品種の持つ優れた農業形質の大半を維持しつつ、一部の形質が変異している可能性がある。その変異を圃場栽培によって識別・評価し、原品種より優れた変異を持つ系統を選抜することを目的とした。 原品種として用いた「男しゃくいも」は食用ばれいしょの主要品種であるが、粒揃いが悪い、目が深い、切断した際に褐変が著しい等の欠点がある。また、「キタアカリ」は抵抗性で蒸しいもの食味が良く黄肉色で、近年栽培面積が増加している品種である。
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[成果の内容・特徴]
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(1)約4700の培養クローンのマイクロチューバを供試した1作目の圃場栽培は、異常個体や生育不良が多く、花・茎色変異以外の遺伝的と認められる変異形質の検出は困難であった。
(2)2年目以降、確認可能な変異形質は原品種によって傾向が異なり、「男しゃくいも」は剥皮褐変程度、「メークイン」は休眠期間、「キタアカリ」では花・芽・肉色の変異の出現が多かった。菌培養濾液添加培地で選抜したクローンから出現が期待された疫病等の病害抵抗性変異は認められなかった。選抜実数を表1に示した。
(3)主な選抜系統では、「男しゃくいも」では収量がやや少ないが形が良く変色の少ないKC92D-7、「キタアカリ」では中生化し小粒だが高澱粉価であるKC92K-56、白肉のKC92K-31等が選抜された(表2,表3)。これらは、調理・加工特性が原品種より優れ、交配母本としての利用のほか、改良品種として普及が期待できる。
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[成果の活用面・留意点]
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(1)原品種の短所を改良する効果的な育種法として活用できるが、遺伝変異の確認には3〜4年が必要である。
(2)選抜系統の利用は目的、用途を限定して原品種と使い分けるのが望ましい。
[その他]
研究課題名:選抜クローンを用いた効率的育種法の開発と交配母本の作出
予算区分:特別研究(バイテク育種)
研究期間:平成7年度(平成3〜7年度)
発表論文等:ばれいしょ培養細胞変異の圃場検定第1報 変異クローンの出現と安定性、育種学雑誌、44巻別冊1、1994
ばれいしょ選抜ソマクローンの主要特性、育種作物北海道談話会会報、36号、1995
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