春播小麦の根雪前簡易耕起・播種技術
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[要約]
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播種装置付チゼルプラウを用いた簡易耕起により春播小麦を根雪前に播種する作業方式は、根雪前の湿潤な土壌条件下においてロータリ耕うん方式と同等の砕土率と約2倍の作業速度が得られ、1工程で作業可能なことから高能率である。
北海道農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
[連絡先]011-857-9300
[部会名]総合研究 総合研究(農業物理)
[専門] 栽培・作業
[対象] 麦類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
春播小麦は、水稲収穫後も播種が可能で、田畑輪換の畑転換初年目の作物として利用が期待できる。春播小麦の播種を慣行の融雪期(石狩・空知地方で4月中〜下旬)よりも早い根雪前(前年の11月中旬〜12月上旬)に行い、生育期間を拡大することにより登熟が促進され、品質が向上し、多収となることが明らかにされている。しかし、根雪前は天候が不順で土壌が湿潤なため、従来のロータリ耕うん作業は困難であり、実用的な耕うん・播種作業技術を開発する必要がある。そこで、チゼルプラウを用いた簡易耕起・播種を行う作業機を開発し、根雪前での作業性能を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
1.試作機はチゼルプラウをベースに、播種装置、種子分散板、砕土ローラ等を取り付け
1工程で耕起・播種を行う作業機であり、25cm間隔に配列されたチゼル爪により作土を
深さ約18cmまで耕起し、播種装置および種子分散板により小麦種子を地表面に散播し、
を破砕しながら覆土を行う作業機である(図1)。
2.本機は、根雪前の湿潤な土壌条件において、ロータリ耕うん機と同等の砕土率(土塊
径2cm以下の土壌の占める重量割合)が得られ、小麦播種に適した播種床を形成するこ
とが可能である(表1)。
3.本機はロータリ耕うん機に比べて2倍程度の作業速度が得られる(表1)。また、1工程で耕起と播種を同時に行うため作業工程が簡略となり、作業速度2.1m/sにおける作業能率は12min/10aと高能率である。(表2)。
4.本機を使用した根雪前播種は慣行の春播種方式に比べて苗立率が低いため、播種量を
多くして苗立数を確保することにより春播種程度の収量が得られる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1.根雪前播種方式は春播品種の「ハルユタカ」を用いた多雪地帯(土壌非凍結地帯)の
適用技術である。
2.播種時期の機械作業性を良好にし、融雪後の湿害を防止するために、暗きょ排水とと
もに播種期前に圃場表面排水用明きょを施工する必要がある。
[その他]
研究課題名:作物ー土壌バイオマス間の窒素養分競合変動の解析
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:麦かん施用による土壌中の窒素代謝速度の変動とトウモロコシの窒素吸収
、土壌肥料学会講要旨集、42、1996
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