平成5年から7年の気象変動と圃場における稲葯の生育
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[要約]
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圃場における葯の生育は天候不順の平成7年が最も良く、人工気象室で生育の葯と同じ大きさである。異常高温の平成6年の葯の長さは大冷害の平成5年より若干長いに過ぎない。葯の生育には出穂21〜30日前の高い気温が影響している。
北海道農業試験場・地域基盤研究部・冷害生理研究室
[連絡先]011-857-9312
[部会名]基盤研究
[専門] 栽培
[対象] 稲類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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生殖生長期間の生育温度に依存して形成される葯当たり花粉数は受精時における不稔と密接な関係がある。ところが、平成5年から7年の3ヶ年は気象変動の大きい年であり、花粉形成を簡便に推定するための葯長の評価に好適な年次である。
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[成果の内容・特徴]
1)稲作期間のうち、花粉形成開始直前の6月下旬から開花終了の8月中旬までの平均気温は、平成5年が平年値に比べ2〜3℃低い旬が多い冷害年である(全道平均の作況指数は40)。一方、平成6年は平均気温が2〜4℃高い旬が多い高温年である(作況指数108)。さらに、平成7年は平均気温の変動が大きい天候不順年である(作況指数103)。
2)人工気象室(25/19℃)で健全に育成した品種の葯長と圃場で育成した平成5〜7年の各年の品種の葯長との間には、いずれの年も高い正の相関関係がある(図1)。
3)人工気象室で育成した品種の平均葯長を100(対象区)とした時、大冷害であった平成5年の圃場の平均葯長は86と短く、また平年に比べ高温に推移した平成6年の平均葯長も91と短い。一方、平成7年は気温変動が大きいにもかかわらず人工気象室で育成した品種の平均葯長とほぼ同じ大きさである(表1)。
4)各品種ともに出穂期を揃えて葯の生育と平均気温との関係を比較すると、出穂前21〜30日ころの平均気温は平成7年が平成5、6年に比べ高く、この時期の高い平均気温が葯の生育に大きく影響している。(図2)
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[成果の活用面・留意点]
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1)異なる年次における稲葯の生育状況を生殖生長期間の平均気温から解明できる。
2)その際、出穂期を揃えて比較する必要がある。
[その他]
研究課題名:稲品種の耐冷性発現・生理機構の解明
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜11年)
発表論文等:北海道における平成5年〜7年の気象変動と圃場のイネ約の生育、日作紀 66巻別1号、1996
北海道稲作期間の気象変動と約の生育ー平成5年から7年のデータを中心にー、農業および園芸、71巻12号、1996
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