繋ぎとフリーストール間での飼養方式の変更が初産牛の増体と乳量に及ぼす影響
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[要約]
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繋ぎ飼いからフリーストールへの飼養方式の変更は、初産牛の乳量には特に影響を及ぼさないが、体重は変更後増加する。一方、フリーストールから繋ぎ飼いへの変更も、乳量には特に影響を及ぼさないが、体重は変更後一時的に減少する。
北海道農業試験場・畜産部・家畜管理研究室
[連絡先]011-857-9307
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門] 飼育管理
[対象] 家畜類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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フリーストールシステムが規模拡大と省力化を追求する方策として注目され普及が進んでいる。しかしながら、牛群の組み替えや牛の導入は群内の社会的構造を混乱し、特に導入牛の増体と乳量を低下させるとの報告がある。また繋留による行動抑制も家畜にストレスとなることが分かっている。そこで泌乳中期での飼養方式の変更が泌乳と増体に及ぼす影響について調べた。
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[成果の内容・特徴]
初産牛を供試し、泌乳中期(分娩後15週目)に、タイストールでの繋ぎ飼いからフリーストールでの放し飼いへ、あるいはその逆に飼養方式を変更した。タイストールでは、グラスサイレージ、配合飼料、乾草あるいはラップサイレージを1日2回分離給与した。フリーストールでは、グラスサイレージを1日2回、配合飼料は自動給餌機で1日3〜4分割して、乾草あるいはラップサイレージは草架から自由摂取で給与した。搾乳は両飼養方式ともミルキング・パーラで実施した。フリーストール飼養時の牛群頭数は17〜40頭、飼養面積は10.8〜19.9m2/頭 であった。飼養方式変更前6週から変更後11週までの体重と乳量の推移を調べた(図1)。
@繋ぎ飼いからフリーストールへの変更前後における両形質の推移の傾向については、乳量では有意に異ならなかったが、体重では、増体量が変更前の2.0kg/週から4.1kg/週へと有意に増加した。
Aフリーストールから繋ぎ飼いへの変更については、変更前後の推移の傾向が、乳量では有意に異ならなかったが、体重は変更直後から有意に減少し、変更後11週目に変更前の水準に回復した。
Bしたがって、本試験条件下での飼養方式の変更が、初産牛に及ぼす影響については、特に増体にみられたように、フリーストールへの変更は正の効果を、繋ぎ飼いへの変更は負の影響をもたらすことが示唆された。
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[成果の活用面・留意点]
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@ 繋ぎ飼いとフリーストールでの放し飼いとの間で飼養方式を変更した場合の、牛の新規環境への順応とその時に牛が受けるストレスの緩和法について検討する上で参考となる。
A この成果は在来のフリーストール牛舎における飼養面積約 10m2/頭以上の飼育密度と牛が飼料、特に粗飼料を自由に採食できる条件の下で得られたものである。
[その他]
研究課題名:環境ストレスが乳質及び乳量に及ぼす影響の評価
予算区分:特別(高品質乳)
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:泌乳中期における飼養方式変更後の初産牛の体重と乳量の推移。第92回
日本畜産学会大会発表要旨集(1997)
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