アルファルファの耐凍性の季節変化と品種間差異
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[要約]
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アルファルファは、札幌では根雪となる12月上〜中旬にほぼ最大の耐凍性を獲得する。LT50(半数個体致死温度)による33品種の耐凍性の評価では、全体が-5.4℃から-26.6℃に分布するのに対し、北海道に現在適応している品種は、-5℃から -20℃に分布する。組織の水の物理性(水のプロトンの緩和時間)は、耐凍性評価の新しい指標となりうる。
北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室
北海道農業試験場・地域基盤研究部・上席研究官
[連絡先]011-857-9272
[部会名]畜産・草地(草地)
[専門] 育種
[対象] 牧草類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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アルファルファにとって越冬性は、翌年の収量、永続性に影響する重要な形質で、耐凍性はその主要な一要因である。特に、北海道東部の少雪・土壌凍結地帯に適する品種を育成するためには、耐凍性の一層の強化が必要である。そこで、品種育成の基礎的データを得るため、耐凍性の季節変化及び国内外の主要品種・系統の品種間差異を明らかにするとともに、耐凍性評価の指標として水の物理性に注目し、その有効性を検討する。
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[成果の内容・特徴]
@耐凍性の異なる4品種を用いて秋から翌年春までの耐凍性(LT50:半数個体致死温度)の季節変化を調べた(図1、1994年 7月12日圃場に播種、根雪期間12月10日〜 3月28日)。ハードニング開始(耐凍性の増大)時期は、9月下旬から10月上旬の最低気温が10℃を切った頃にみられる。耐凍性の品種間差異は、ハードニングが進行するにつれ拡大し、根雪になる12月上旬から中旬に最大となる。根雪下では耐凍性は低下し、耐凍性の低い品種ほど低下の時期が早い。したがって、根雪前後が耐凍性の品種間差異を評価する最もよい時期である。
A耐凍性の品種分布は、-5.4℃から-26.6℃で、北海道に現在適応している品種の耐凍性は -15から-20℃と、変異の中〜やや上位に位置し、今後の耐凍性の改良の余地が示 唆された(表1、1994年 8月 9日圃場に播種、12月 8日調査)。
Bハードニングが誘導される時期に、クラウンなどで急速な含水量の減少が起こるが、含水量と耐凍性の品種間差異との関連は明確でない(図2)。NMR(核磁気共鳴装置)によりクラウン組織の水のプロトンの緩和時間(T1)を調べたところ、T1の季節変化ならび品種間差異は、耐凍性のそれらとよく一致し(相関係数r=0.78、P<0.01)、耐凍性の新しい指標としてT1の有効性が明らかとなった(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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@アルファルファの耐凍性の改良及び越冬性評価のための基礎的データとして活用できる。
A耐凍性の評価は札幌での観測値であり、年次、場所、特にそばかす病の発病程度により変動がある。
[その他]
研究課題名:ハードニング誘導に及ぼす環境要因と体内要因の影響の解明
予算区分:特別研究(ハードニング)
研究期間:平成8年度(平成5〜7年)
発表論文等:Seasonal in freezing tolerance and its associated traits of alfalfa cultivars. Program and abstracts of 5th Internatinal Plant Cold Hardines Seminar,1996
アルファルファにおける越冬性関連形質の品種間差、育雑、46(別2)、1996
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