土壌微生物バイオマスと窒素代謝速度との量的関係
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[要約]
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重窒素同位体希釈法により測定される土壌中の窒素無機化速度と有機化速度は小麦収穫物残渣のみをすき込んでも大きく変化しないが、硫酸アンモニアを同時に施用することにより増大する。これらの速度は土壌微生物バイオマスと正の相関関係にある。
北海道農業試験場・畑作研究センター・生産技術研究チーム
[連絡先]0155-62-9274
[部会名]生産環境
[専門] 土壌
[対象]
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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土壌微生物は有機物の分解を担い、土壌から作物へ養分を放出するとともに、それ自体が養分のプールとしての役割をも担っている。窒素養分動態の制御に向けて、このプールの大きさが窒素代謝の変動とどの様に関わるのかを明らかにすることが必要である。そのため、近年確立しつつある重窒素同位体希釈法とクロロホルムくん蒸抽出法を用いて、高C/N比有機物である小麦収穫物残渣と硫酸アンモニアの施用に伴う窒素無機化速度と有機化速度及び微生物バイオマスの変動と、それらの量的関係について解析する。
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[成果の内容・特徴]
播種時に細断した小麦収穫物残渣をすき込み、基肥の硫酸アンモニア量を変化させて、とうもろこしを栽培し、経時的に採取した土壌の窒素無機化速度と有機化速度及び微生物バイオマスを調査した。
1.とうもろこしの初期生育における窒素吸収量は、硫酸アンモニアを少量しか施用しない場合には、小麦収穫物残渣をすき込むことにより低下し、特に褐色火山性土で著しかった。(表1)
2.重窒素同位体希釈法により測定される土壌中の窒素無機化速度と有機化速度は小麦収穫物残渣をすき込んでも大きく変化しない。従って、小麦収穫跡地の”窒素飢餓”は、土壌中での窒素無機化速度の低下によるものでないと推測される。硫酸アンモニアの施用量が増加すれば、褐色火山性土では両速度とも高く維持され、褐色低地土でも無機化速度の増大が認められる。(図1)
3.いずれの土壌においても窒素無機化速度と有機化速度の大小は、微生物バイオマス窒素の大小と対応し、この関係は処理による速度変化の大きい褐色火山性土で明らかであった。また、この関係は、窒素代謝速度の土壌型間の比較にも有効である。(図2)
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[成果の活用面・留意点]
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1.土壌微生物バイオマス測定結果から重要機能である窒素無機化と有機化活性を推定する際に参考となる。
2.本試験は、内径0.3mの枠圃場で行われた。
[その他]
研究課題名:作物−土壌バイオマス間の窒素養分競合変動の解析
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:麦かん施用による土壌中の窒素代謝速度の変動とトウモロコシの窒素吸収、土壌肥料学会講演集、42、1996
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