キャベツのビタミンU定量法の確立とその応用
[要約]キャベツに含まれる抗胃潰瘍性成分であるビタミンUの定量法を確立し、これを用いて、ビタミンU含量の品種間差異及び部位別分布を明らかにした。
北海道農業試験場・地域基盤研究部・品質生理研究室
[連絡先] 011-857-9301
[部会名] 基盤研究
[専門] 生理
[対象] 葉茎菜類
[分類] 研究
[背景・ねらい]
キャベツに含まれるビタミンU(塩化メチルメチオニン)は抗胃潰瘍性のある機能性成分である。このビタミンUの定量法を確立して、キャベツでの蓄積部位や品種間差異を明らかにすることで、キャベツの新しい品質指標となり得るか検討する。
[成果の内容・特徴]
1. ビタミンU(VU)は遊離アミノ酸としてOPA(オルトフタルアルデヒド)法によりHPLCで測定可能である。VUは熱及び高pHで非酵素的分解(ビタミンU→ホモセリン+ジメチルスルフィド)が促進され(第1表)、これまでのアミノ酸抽出法(熱抽出法)では分解されるので注意が必要である。VUは、キャベツをみじん切りにし、80%エタノールで室温(20℃)3時間放置すれば(第1図)抽出できる。VUは低pH域で安定しているため、抽出後pH2.2クエン酸緩衝液でサンプル調整する。
2. ‘アーリーボール’、‘プラディーボール’、‘金系201’及び‘T612’のいずれの品種も、VUは生育後期に結球葉に蓄積してくる(第2表)。すなわち、結球キャベツの可食部位のうち、中肋を除いた結球葉での蓄積が高く、分析試料はこの部分を使用するのがよい。
3. 貯蔵キャベツでは、結球の中心に近いほどVU含量が高く、低温貯蔵中(4℃)に増加する。貯蔵中のVU蓄積量は品種間差異があり、‘T612’では蓄積量が少なく‘金系201’では高い(第2図)。貯蔵キャベツあるいは短期間保存されたキャベツのVU測定は、中心部付近を試料とするのが望ましい。
[成果の活用面・留意点]
1. キャベツのビタミンU定量法として活用できるばかりでなく、他作物での適用も可能である。
2. 今後多品種にわたるVU含量調査を行い、詳細な品種間差異を明らかにする必要がある。
3. 貯蔵性とVU含量に何らかの関係があると考えられるため、VU含量の品種間差異測定の際には、試料の貯蔵・保存状況を明らかにしておく必要がある。
4. VUは分解してジメチルスルフィド(多く存在すると悪臭となる)を生成するため、高VU含量品種を育成する場合は、VU分解の少ないものでなければならない。
[その他]
研究課題名:野菜のプレ・ポストハーベストにおける特殊遊離アミノ酸の動態解明
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成7年〜11年)
研究担当者:滝川重信、石井現相
発表論文等:キャベツのビタミンU及びS-methyl L-cysteine sulfoxide に関する研究、園芸学雑誌、65(別2)、1996
ビタミンU含量のキャベツ及びレタスの可食部位別分布、園芸学雑誌、65(別2)、1996
ビタミンUの定量法の確立と貯蔵キャベツにおけるその品種間差異、園芸学雑誌、66(別1)、1997.
貯蔵キャベツにおけるビタミンU蓄積の品種間差異、園芸学雑誌、66(別2)、1997
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