エタノ−ル用てんさい素材の育成
[要約]エタノ−ル原料用として,エタノ−ル変換効率及び生成量の優れるてんさい一代雑種系統を育成した。直播栽培では,最大で約600L/10aのエタノ−ル生成が可能である。
北海道農業試験場・畑作研究センタ−・てんさい育種研究室
[連絡先]
0155-62-9271[部会名] 作物
[専門] 育種
[対象] 工芸作物
[分類] 研究
[背景・ねらい]
将来,予想される石油枯渇に伴い,様々な代替エネルギ−が考えられるが,光合成を利用したバイオエネルギ−は二酸化炭素の循環が可能な環境調和型エネルギ−として期待されている。このエネルギ−では,光合成により植物体に蓄積された炭水化物を発酵させ,エタノ−ルを生成し利用するが,工芸作物てんさいはエタノ−ル変換が容易な蔗糖を蓄積するため,新エネルギ−源となる可能性が高い。
てんさいを用いたエタノ−ル生成は糖量に依存するため,根重及び糖分の高い系統が望まれる。このため,根重の増加を目的に,根重の高い飼料用ビ−ト及び既存のてんさい遺伝資源を用い多胚花粉親系統を育成し,これらを既存の単胚種子親系統に交配して,エタノ−ル原料用単胚一代雑種系統を育成する。育成系統のエタノ−ル生成量は,蔗糖を最大限に発酵できる嫌気発酵によりエタノ−ル生成量を検定する。
[成果の内容・特徴]
1
. 育成一代雑種系統では,「JBA-22」,「JBA-23」及び「JBA-24」の3系統がエタノ−ル生成量及びエタノ−ル濃度が高く有望である(表1)。2
. 飼料ビ−トは糖量が低いため,エタノ−ル生産には不適である(表1)。3
. 一代雑種を構成する多胚花粉親系統としては,「NK-210」が有望である(表1,表2)。4
. エタノ−ル変換効率は,系統間差が認められ,飼料ビ−ト「Monoborris」では90%である(表1)。[成果の活用面・留意点]
1
. バイオエネルギ−の基礎資料として活用できる。
[その他]
研究課題名:アルコール原料用てんさい新品種の育成
予算区分:大型別枠(新需要創出)
研究期間:平成9年度(平成3年〜平成9年)
研究担当者:大潟直樹、田中征勝、川勝正夫、蔵之内利和
発表論文等:アルコール原料用テンサイ一代雑種の育成に関する研究、てん菜研究会報、
36、1994嫌気発酵下における
B.vulgarris Lのエタノール変換効率の評価、育種・作物学会北海道談話会会報、38、1997目次へ戻る