牛乳タンパク質と遺伝性疾患BLADの遺伝子型同時判定法

 

[要約]乳タンパク質カッパーカゼインと遺伝性疾患BLADの遺伝子型を1本の試験管で増幅から制限酵素消化までを行うことで、短時間でかつ簡易に遺伝子型同時判定を可能とする手法である。

北海道農業試験場・畜産部・家畜育種研究室

[連絡先] 011-857-9270

[部会名] 畜産・草地

[専門] バイテク

[対象] 家畜類

[分類] 指導

 

[背景・ねらい]

カッパーカゼイン(κ−CN)は牛乳品質の重要な成分であり、チーズ製品の加工特性に関連している。ウシ白血球粘着不全症(BLAD)は感染症に罹りやすくなる遺伝性疾患で個体損失につながる。乳タンパク質のみならず疾病も考慮した適正な交配計画の実施を可能とするため、両遺伝子の増幅から制限酵素消化までを1本の試験管で行い、短時間でかつ簡易に遺伝子型を同時判定する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

1. GenBank(NCBI)に登録されているκ−CNとCD18(BLADの原因遺伝子)の塩基配列情報よりプライマーを設計した。PCR法でDNAの目的領域を同時増幅した後、2種類の制限酵素で同時消化を行い、遺伝子型はポリアクリルアミドゲル電気泳動法で同時検出した。

2. κ−CNとCD18の遺伝子型を短時間でかつ簡易に同時判定するための最適なPCR−RFLP法の条件を確立した(図1)(表1)

3. 乳牛検定組合加入の一般酪農家5軒の牛群(500頭)と北海道農業試験場の1牛群(99頭)を供試牛(ホルスタイン種)として遺伝子型を解析した結果、κ−CNでは6牛群間で遺伝子型頻度にばらつきが見られ、チーズ生産に適したB/B型の頻度は低かった(表2)

4. CD18の解析では、4牛群でBLADキャリアーが確認され、そのうちの2牛群は8%以上の頻度で存在した。種雄牛ではBLAD遺伝子の排除が進められているが、雌のBLADキャリアーは生産され続けている実態が明らかとなった(表3)

5. 雌側からのBLADキャリアー排除を目的とする検査は行われていないため、本法は生産現場での利用が可能と思われる。

[成果の活用面・留意点]

1. 本法は一般牛群での適正な交配計画を実施するための一助となり、チーズ生産に関連する優良遺伝子であるκ−CN−B型の集積と感染病関連の不良遺伝子BLADの排除に利用できる。

 

[その他]

研究課題名:DNAマーカ−による乳牛の生産性関連形質の解析

予算区分:経常・場特定

研究期間:平成8年度(平成8年〜平成12年)

研究担当者:山本直幸、佐々木修、富樫研治、

発表論文等:山本直幸、佐々木修、富樫研治、κ−caseinとBLADの遺伝子型判定のためのPCR RFLP法の検討、第53回北海道畜産学会

山本直幸、佐々木修、富樫研治、κ−カゼインとBLADの遺伝子型同時検出による牛群解析、北海道畜産学会報、40、(投稿中)

 

目次へ戻る