遺伝子導入によるキュウリモザイクウイルス抵抗性トマトの作出
[要約]キュウリモザイクウイルスに付随するサテライトRNAのcDNAを遺伝子導入したトマトは、同ウイルスに抵抗性を示す。遺伝子導入トマトの感染株率は感受性品種と同じであるが、ウイルス増殖を抑制して病徴は軽微である。
北海道農業試験場・生産環境部・ウイルス病研究室、作物病害究室
[連絡先] 011-857-9278
[部会名] 生産環境
[専門] 作物病害
[対象] 果菜類
[分類] 研究
[背景・ねらい]
キュウリモザイクウイルス(CMV)は、各種のアブラムシによって非永続的に伝搬され、多くの野菜類・花き類に被害をもたらしている。北海道農試ではこれまでサテライトRNAを利用した弱毒ウイルスを作出し、トマトのCMV防除に有効であることを明らかにしてきたが、さらに有効な防除法の開発が求められている。トマトには近縁野生種も含めてCMV抵抗性の遺伝子資源はないので、上記のサテライトRNAを発現する遺伝子をトマトに導入し、CMV抵抗性のトマトの作出をめざす。
[成果の内容・特徴]
1. CMV弱毒株に用いているサテライトRNA(55-1)のcDNA(サテライトRNA発現遺伝子)をバイナリーベクター(pBI121)に組み込み(図1)、アグロバクテリウムを用いてトマト(品種:秋玉)に遺伝子導入した。
2. 導入当代(S0)クローン、自殖1世代(S1)、2世代(S2)系統にサテライトRNAを持たないCMV-42CMを接種し、抵抗性ホモの系統を選抜した。
3. 抵抗性がヘテロと推定された系統について抵抗性の分離を調べたところ、抵抗性:感受性はほぼ3:1に分離した(表1)。抵抗性は、優性の単一遺伝子に支配されているものと思われる。
4. 抵抗性ホモ系統(No.4-7)にCMV-42CMを接種すると、発病株率は感受性品種と同じであり、軽微なモザイク症状が現れる(図2)。この抵抗性は感染株率を抑制することはないが、ウイルス増殖を抑制して病徴を軽減するタイプであると思われる。
5. 本抵抗性は、サテライトRNAを持たないCMV分離株に対しては有効であるが、えそ性のサテライトRNAを有するCMVには有効でない。
[成果の活用面・留意点]
[その他]
研究課題名:CMVサテライト遺伝子導入トマトのウイルス病検定
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成6年〜平成9年)
研究担当者:河辺邦正、岩崎真人、本田要八郎(農研センター)
発表論文等:遺伝子組み換えによるウイルス病抵抗性育種、北農、64、349-351、1997
キュウリモザイクのサテライトRNA遺伝子導入トマトの作出、今月の農業、42(1)、76-80、1998
目次へ戻る