発病抑止土壌由来の糸状菌によるテンサイ根腐病の防除効果
[要約]リゾクトニア菌に対する発病抑止土壌から、テンサイ根腐病を抑制するバーテシリウム菌やトリコデルマ菌が分離され、圃場でのふすま・バーミキュライト培養菌体の株元施用、育苗時および移植時施用の三つの組み合わせで効果がある。
北海道農業試験場・畑作研究センター・環境制御研究チーム
[連絡先] 0155-62-9276
[部会名] 生産環境
[専門] 作物病害
[対象] 工芸作物
[分類] 研究
[背景・ねらい]
テンサイ根腐病は、リゾクトニア菌(RhizoctoniasolaniAG2-2)を病原とし、恒常的に発生の見られる重要病害である。このリゾクトニア菌を繰り返し接種することにより、苗立枯病を指標とした土壌の抑止性が誘導されることが明らかにされており、その抑止要因として拮抗性の糸状菌の関与が推察された。本研究は、リゾクトニア菌に対する発病抑止土壌から分離された拮抗微生物を利用して、根腐病の防除技術の開発を行うことを目的とする。
[成果の内容・特徴]
1. リゾクトニア菌の繰り返し接種によって誘導された発病抑止土壌から、リゾクトニア菌による苗立枯病の抑制程度を指標とした一次スクリーニングにより、根腐病を抑制するバーテシリウム菌やトリコデルマ菌が得られる(図1)。
2. 選抜された3菌株(バーテシリウム菌、HV8、HV10;トリコデルマ菌、HT87)を用いた圃場での施用試験の結果、ふすま・バーミキュライト培養菌体の株元処理で効果が高く、さらに、育苗時処理、移植時処理、株元処理を組み合わせた場合(3回処理)に最も効果がある(図2)。育苗時処理および移植時処理単独では、効果は低い。
[成果の活用面・留意点]
1. 発病が著しい場合には、防除効果が劣る。
2. 分離された糸状菌の、実用場面での利用方法について検討が必要である。
[その他]
研究課題名:発病抑止土壌の拮抗作用を利用したテンサイ根腐病抑止技術の開発
予算区分:高収益畑作
研究期間:平成9年度(平成7年~平成9年)
研究担当者:佐山 充、本間善久
発表論文等:繰り返し接種土壌から分離された菌寄生菌Verticillium biguttatumのRhizoctonia solani AG2-2によるテンサイ苗立枯病の抑制、日植病報、62(6)、651,1996
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