北海道水田地帯における広域野菜産地の形成手法と条件


[要約]
広域野菜産地を形成する効果は、規模と多様性の拡大をもとに、輸送・資材費のコスト低減、価格面 の改善、農業者の栽培技術向上として、短期ならびに中長期にあらわれる。ただちに広域の農協合併に至らな い場合は、事前に広域農協連合という形で野菜の広域産地づくりを先行させることが有効である。
北海道立中央農業試験場・経営部・流通経済科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]総合研究(農業経営)
[専門]   経営
[対象]   
[分類]   指導 

[背景・ねらい]
米の収益性が低下し、水田地帯では野菜の産地能力を向上させることが重要 になってきた。そして、産地形成の中核となる農協は広域合併の途上にある。 ここでは、農協再編を考慮した広域野菜産地形成をスムーズにおこなう手法と 条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 複数市町村をまたぐ広域野菜産地には、協議会、広域農協連合、広域合併 農協の3つの組織形態がある。このうち協議会は品目による組織化と、地域に よる組織化の2つある。設立の早い広域野菜産地は稲作限界地で形成され畑 作野菜を主体とするが、90年代の形成は稲作中核地帯において転作野菜をベ ースに、広域農協連合、広域合併農協によるものが主である。
  2. 広域農協連合、広域合併農協は、ともに規模と多様性の拡大が進み、@短 期的に輸送費・資材費の低減、多様な市場情報入手による販売先選択肢の拡 大、A中長期的にJA職員の専任・専門化に基づく販売能力の向上、地域条 件の違いを利用した継続出荷、施設投資の効率化によって、産地の対市場位 置が高まり有利販売の可能性が広がる。また、従前の農協区域が取り払わ れ、農業者には栽培品目の選択肢拡大と優良農家からの技術修得機会の増大 がもたらせられる。他方、広域農協連合には経済・人事面の規制がある。
  3. 広域野菜産地の運営をよりスムーズに進めるための行政的課題として、@ 広域市町村を対象にした補助事業の拡大、A事業施設の他用途利用制限の緩 和、B安定基金制度における広域野菜産地内への一括適用がある。
  4. 広域野菜産地の形成には、条件作りに長期間を要するもの、農協合併を前 提に効果が発揮されるものが多い。このため、ただちに農協の広域合併に至ら ない場合、事前に広域農協連合という形で野菜産地作りを進めておくことが有 効である。
    (表1) (表2) (図1)

[成果の活用面・留意点]

    水田地帯以外でも広域野菜産地を形成するための情報として有効である。 ただし、扱う品目を限定した協議会方式の広域野菜産地の運営・形成について は本課題の対象外である。

[その他]
研究課題名:北海道稲作地帯における広域野菜産地の形成手順
予算区分:道 費
研究期間:平成9年度(平成7年〜9年)
研究担当者:坂本洋一、荻間 昇、三好英実
発表論文等:平成9年度経営部研究年次報告書(中央農試経営部)、1998年(予定)
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