大区画水田の適正区画規模
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[要約]
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殖民区画の水田を再整備する際のモデルとして設定した、対照標準区
画を含めて8タイプの区画について求めた。造成費用・圃場作業効率・投下労働時間等のシミュレーション
結果と実規模の大区画水田における水稲の生育・収量調査、水利用状況の調査結果から、適正区画規模
は、1〜1.5ha程度が好ましい。
北海道立中央農業試験場・農業土木部・農村環境科、
農業機械部・機械科、経営部・経営科、稲作部・栽培第一科
[連絡先]01238-9-2001、0126-26-1518
[部会名]総合研究(農業物理)
[専門] 農地整備
[対象] 計画・設計
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
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北海道特有の区画形態である殖民区画(545x545m)を基盤とした大区画水田の、
現有作業機械体系を前提とした適正区画規模を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 殖民区画の水田を再整備する際のモデルとして、対照標準区画(殖民区画を
4園区に分割し各圃区を18耕区に等分割したもの。1耕区面積0.36ha)を合め8タイプの区画を設定
した。草刈り面積は、殖民区画を3及び4圃区に分割するモデル(ターン式農道無設定)で大幅に減少す
るが、2圃区に分割するモデルではターン式農道のスロープ部があるため僅かの減少にとどま
る。大区画水田の造成費は、整地費の他に暗渠、機道、用排水路の更新を含めた区
画整理型で712〜896千円/10a、また、用排水残置型では435〜459千円/10aを要する(地形勾配
1/300以下)(表1)。
- 機械作業についてシミュレーションを行った結果、園易作業量は、面犠の
増加に伴い増加する傾向を示すが、1haで鈍化し、1.5haを越えるとその増加はわずかである(表1)。
したがって現有機械を使用した連正区画は、面積では1〜1.5ha、長辺長では170m程度、短辺長で
は実作業幅の4倍以上で偶数工程になることが好ましい。
- 大区画水田利用の10a当たり稲作投下労働時間は対照標準区画水田に比べて
097〜1.51時間減少し、15ha規模の水稲作付げ面犠では年間150〜230時間の省力化が期待できる
(図1)。
- 生育収量では、突き均し工法による切り土・盛り士の影響と水口の影響で
むらが認められる(図2)。前者に対しては既往の対応技術の導入により、後者については水口の適正
配置と取水時刻の適正化を図ることにより、大区画化に伴う生育収量のむらは回避できるものと
判断される。
- 水利用の実態調査から、水口は圃場への給水強度及び対辺までの距離を考
慮して個数と設置位置を定める必要がある。給水強度は概ね6.5mm/h以上、対辺距離は200m以下にす
るのが望ましい。
- 大区画水田の整備に当たっては、受益農家の年増加所得額が必ずしも高く
ないことから、高補助率等生産者に対する支援策が必要となる。
[成果の活用面・留意点]
- 本成績は、現行の稲作個別経営・栽培体系を前提として大区画水田の適正
区画規模を検討したものである。
- 将来、機械作業体系や、(直はんの導入等により)営農技術体系が変わる可
能性がある場合には、その点を考慮して区画の規模と形状を定めるべきである。
- 区画を大きくすると、圃場の排水能力が悪くなりがちである。したがっ
て、排水不良田は、特にその悪化が危惧されるので、排水路や暗渠等の整備及ぴ維持管理体制の強化並
びに土壌管理に十分配慮する必要がある。
[その他]
研究課題名:大区画水田における機械化営農体系の指針策定
予算区分:道費
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:寺元信幸・原令幸・西村直樹・田中英彦
発表論文等:なし
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