牛ふん尿スラリーの濃度と温度が管路での輸送特性に与える影響


[要約]
牛ふん尿スラリーの管路輸送では、濃度Tsがおよそ4〜5%をこえると、濃度上昇に伴う損失水頭の増大が顕著になる。また、Tsがおよそ5%をこえると、管路の水理設計でスラリーの温度の影響を考慮する必要がある。
開発土木研究所・農業開発部・土壌保全研究室
[連絡先]011-841-1111
[部会名]総合研究(農業物理)
[専門]   用排水
[対象]   農業工学
[分類]   指導

[背景・ねらい]
牛ふん尿スラリーを管路輸送する場合の損失水頭は、濃度や温度の影響を受ける。輸送前の濃度調整に必要な用水量算定のためには、スラリー濃度と損失水頭の関係を把握する必要がある。また、スラリーの粘度が低下する冬期間にも安全に管路輸送を行うためには、温度と損失水頭の関係を明らかにする必要がある。これらの背景から、北海道天塩町のN牧場を事例として、スラリー濃度と温度が管路による輸送特性に与える影響を調査した。

[成果の内容・特徴]

  1. 擬塑性流体であるスラリーのズリ応力s(Pa)とズリ速度D(s-1)は、一般にs=η0Dnの関係にある(η0:流体粘稠度指数、n:構造粘度指数)。N牧場のスラリーを用いた粘度試験から、濃度や温度を用いた次のような実験式が得られる。 η0=(0.00213-0.000034t)・Ts3.67,n=(2.76+0.184Ts)/(2.76+Ts) ここで、t:スラリー温度(℃)、Ts:スラリー濃度(%)である。
  2. 約600mの管路区間を用いたスラリー輸送試験での損失水頭hf(m)の測定値から求めた損失係数fpは、スラリーの粘度特性から求めた損失係数fLとよく一致する(図-1)。それゆえ、粘度特性から管路輸送時の損失水頭を推定できる。
  3. 温度や濃度、管径d(m)、流速V(m/s)を種々に与えて管路輸送時の損失水頭を推定した。実際の圃場配管でもよく用いられる内径0.125mの管においてV=1.0m/sで輸送した場合、Tsが4〜5%を超えない範囲であれば損失水頭は比較的小さい。しかし、この濃度範囲を超えるとTsの増大に対する損失水頭の増大が顕著になる(図-2)。また、Tsが5%を超えるとスラリー温度のちがいによる損失水頭の差が大きくなる。
    (図-1で示した損失係数fpとfLの計算方法)

[成果の活用面・留意点]

  1. 調査対象のN牧場ではピストンプレス式の固液分離機を用いている。固液分離方法などが違うスラリーでは粘度特性も異なるので、輸送特性の詳細な検討を行うときには実験によりη0とnの式を求める必要がある。

[その他]
研究課題名:ふん尿スラリーの管路輸送効率に関する研究
予算区分 :経常
研究期間 :平成9年度
研究担当者:中村和正
発表論文等:牛ふん尿スラリーの管路輸送に関する基礎的実験、開発土木研究所月報、
                 532号、pp.43-48、1997
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